「知らないくせに一緒にいた」ヴァニタス 桜場七生さんの映画レビュー(感想・評価)
知らないくせに一緒にいた
「お前に何が分かるんだよ」とか言い合うけど、特にお互いのことを深く知りたいわけでもなく、それでも一人ではなんとなくいづらい広い大学の中でなんとなくつるんでいた4人のある「時間」。
それを実験的な映像を含みながらも丁寧に描いた作品。建物の広さを存分に使って人物の動きを見せるのが面白かった。
ストーリーはあるようで、無い…。ただある時期特有の「感情」を描く為だけにシーンを連ねているようにも見える。
だんだん何か起こってきて、それが不穏な雲行きを見せるのだけれどそれが何なのかはあまり語られない。
そして終盤の主要キャラクターの行方には特に驚かされる。ラストシーンを際立たせる為なのか分からないが、そうだとしてもどうなの?など考えてしまう。その他のキャラクターもそれぞれ問題を抱えているもののその描写も決して細かくはないので疑問符を抱えながら観ることにはなる。
それでも4人で過ごす時間が大切だったことは伝わってくる絵づくりだったと思う。ていうか、男なんてほんとはこんなもんで事細かに自分の事とか言わないでなんとなく一緒にいたり、去ったりを繰り返してるもんなのかなと思うような空気感もあり、それはそれでリアルな気もした。
そういう意味では「佐々木、イン、マイマイン」に通じる空気感を感じる。今後他ジャンルも撮れる監督なのか期待するところ。
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