劇場公開日 2020年12月11日

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「モトーラ世理奈のとてつもない存在感だけで映画たり得ている浅薄なポジティブさが鼻につく不快な作品」愛しのダディー殺害計画 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0モトーラ世理奈のとてつもない存在感だけで映画たり得ている浅薄なポジティブさが鼻につく不快な作品

2021年5月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

山梨県在住の姉妹マリとエマは幼少期に母親が不倫相手と家を出て行ってしまって以来ずっと父と3人暮らし。ある朝父親から実は再婚したいと思っている相手がいると聞かされた歩二人は驚きながらも祝福するが、これまでの生活を壊されたくない余り父親を殺害しようと思い立ち、幼馴染の照美が立てた殺害計画を一つ一つ淡々と実行するが・・・。

その殺害計画というのがテキトーで、父と恋人を旅行に行かせる、父を退職させる、関係者に根回しをする、といったデタラメの箇条書き。そもそも幼馴染の照美君はハーバード大学卒ってことになっていて、難しそうな公式やらグラフやらが書き留められているメモを持っていたりするんですけど、そもそもそんな秀才がなぜ定職に就くでもなく山梨の山奥で軽四を乗り回しているのか、何の見返りがあるわけでもないのになぜ姉妹の手伝いを買って出てるのかとか一切説明がないから全然話に乗れない。とりあえず天才とか秀才とかを出して細かい設定を端折るっていうのは日本映画における一つの病巣ですが、ちょっとこれはやり過ぎ。そして姉妹はその計画通りに行動するうちに自分たちの知らない父の素顔を知ってしまい、予定調和バリバリのオチがつきますが正直全く納得いきません。似たようなプロットで始まるオーストリア産サイコスリラー『グッドナイト・マミー』の凶暴極まりないオチを観ている身としては消化不良甚だしく、いかにも元広告代理店勤務の人が作った感じの浅薄なポジティブさに胸やけするどうしようもない作品です。

しかし、それでも本作に見応えがあるのはエマを演じるモトーラ世理奈の美しさがそこにあるから。彼女の途方もない存在感があちこちに空いた穴を全て塞いで本作を一点の曇りもない作品に見せています。役者の存在感があればクズでも映画になることを示した奇跡的な作品で満足感しかありませんが、オススメ度はゼロです。

よね