「的を射る時のツルネが観ている私の心まで射抜いていきました」劇場版ツルネ はじまりの一射 @花/王様のねこさんの映画レビュー(感想・評価)
的を射る時のツルネが観ている私の心まで射抜いていきました
湊や雅貴の憧れたツルネが聴こえる!鳥肌が止まらない!
音響が良い映画館で観なくては意味がない!
アニメの再編集ではなく、劇場版として作られた作品。
第二期の製作も発表され、一期を観ていなくても映画を観れば続きを楽しめるような構成になっている。
そうかと言って、アニメ版一期を観ていると更に楽しめる。駆け足で進んだ作品だったが、劇場版ではキャラクターの心情が深く描かれており、等身大の葛藤や苦悩に共感や感情移入できる。
今作では特に静弥の台詞が物語の流れを作っている。
同じ台詞でも、心境によって感情の乗せ方が変わる演技のうまさに舌を巻いてしまう。
日本の声優さんは本当に素晴らしいなぁ。
アニメでありながら、弓道についての所作や考え方についても触れられている。
良い射、当てる射問題
日本の「道」と名のつく武道には独りよがりではない、礼節を重んじる考え方が根付いているように思う。
自分を律し、メンタルを整えることで周りが見えてくる。
気づきを与えてくれる武道や相手にも感謝や礼を尽くす姿勢が日本の文化だと感じる。
繊細で丁寧な作画の一つ一つに所作の美しさが表れている。
特に西園先生のお宅でお話を聞いているカットで、先生が正座している膝の上に手を置く場面がある。
何気ない場面なのだが、手の指先を揃えて置く仕草、その仕草ひとつで人となりが透けて見える。
体操服を脱いだ後、ロッカーへしまう時に湊が何気なく入れる下着や体操服がキチンと畳まれている。
弓を引く時の流れるような動作も息を呑むほど美しい。
キャラクターや弓道に真正面から向き合って作画された思い、心を震わせることのできる描写が素晴らしい。
そして、なんと言っても音が最高でした。
弓を引く音、矢が放たれた音がキャラクターや場面ごとに異なり、ツルネを聴いてキャラが分かるほど!
心情や感情をツルネで表現するなんて、今までのアニメであったでしょうか?いや、ない。
的を射る時のツルネが観ている私の心まで射抜いていきました。
京都アニメーションではFreeシリーズにどっぷりとハマりました。
ツルネにも、なんと言うか人との繋がりを大切に描こうとする場面や題材を深く掘り下げて魅せる作品の作り方にアニメーション作りの繋がりを感じました。
ああ、作品の中にいろんな人と関わって来た歴史や思いが受け継がれているんだな。
アニメの世界だけじゃなくて、京アニの根っこにある人との繋がりはキチンとその身が覚えていて、作品に向かう時にただひたすらに向き合う中で表現されるものなのだな。と感じました。
いろいろなことがあって、その背景と作品のストーリーが被って見える部分もあって、それでも作品を世に送り出してくださっている京アニの「独りじゃない」「繋がりを諦めない」作品に涙が止まりませんでした。
うまくまとまりませんが、作り手が届けよう、繋げようとしている作品を応援し続けたいと思います。
二期までにたくさんの方に劇場に足を運んでいただき、ぜひツルネを好きになってもらいたいと思いました。
良い音響でお楽しみください!