「やはりミュージカルは劇場で観たいね!」ザ・プロム りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
やはりミュージカルは劇場で観たいね!
ブロードウェイの人気俳優ディーディー・アレン(メリル・ストリープ)。
新作ミュージカルは、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領の妻「エレノア」を主役にしたもの。
しかし、公開初日の批評が散々で、プロデューサーから打ち切りが通告される。
起死回生の手を打たなければ・・・と思ったところ、万年コーラスラインのアンジー(ニコール・キッドマン)がSNSでとある記事を発見する。
その記事とは・・・
インディアナ州の田舎町の女子高生のエマ(ジョー・エレン・ペルマン)が同性愛をカミングアウトしたことで高校生活最後の一大イベント「プロム」から締め出しを食らった、というもの。
エマを支援して、ふたたび注目を浴びようと、売名行為であることを隠して、一同はインディアナ州くんだりまで繰り出した・・・
といったところからはじまる物語で、Netflixオリジナル・ミュージカルとの謳いだが、クレジットでは「ブロードウェイミュージカルに基づく旨」の表記のあるミュージカル映画。
やはり、ミュージカルは劇場で観なければ楽しくない!ということで、音響効果が抜群なので、豊富なミュージカルシーンを楽しむことができました。
物語の深みとしてはいまひとつかもしれませんが、「事件・問題に積極的に参加はするものの、その実、売名行為」という米国人のいやらしさや、「米国では同性愛は結構認知されているのかと思いきや、その実、偏見てんこ盛り」という旧態依然の体質などが巧みに盛り込まれており、テーマ性も充分。
ただし、「ここぞというときの心の変化のきっかけがキリスト教的」というのは鼻白む気もしましたが、これも旧態依然の米国の田舎を皮肉っているとしたら、それはそれで面白いです。
映画的な観点では、「ちょっとしたドラマのあとにミュージカルシーン」、「ちょっとしたドラマのあとにミュージカルシーン」というのが延々と続くので、全体的に一本調子な感がするのと同時に、同じ構成ばかりで疲れてしまいます(ミュージカルナンバーに緩急はあるものの)。
お気に入りのナンバーは、ニコール・キッドマンがボブ・フォッシーのことを歌う「ザズ」。
フォッシー的な妖艶なナンバーで、ニコール・キッドマンのスレンダーな肢体が妖しい輝きを帯びます。
フォッシーの映画『オール・ザット・ジャズ』の「ジャズ」は、心の底から沸き起こる、この「ザズ」のことだったんですね。
舞台「エレノア」でフランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領役を演じる役者バリー・グリックマン役は、『ワンチャンス』でポール・ポッツを演じたジェームズ・コーデン。
歌って踊れるおデブちゃん、というなかなか得難い役者ですね。