「話に乗っていけず…」Mank マンク てけと2さんの映画レビュー(感想・評価)
話に乗っていけず…
流れる様なウィットに富んだ会話劇に元ネタをリスペクトした画面づくり。今の撮影技術で過去へのオマージュをやる意味はあると思うんだけど、この辺の業界知識に明るくないので何処までが脚色か分かりかねるのですが映画のあちらこちらに意図的な考えの刷り込みみたいなものがある様に感じられてうううう〜ん。
飲んだくれのオッサンが自分の心に負けず反権力的なメッセージを送りだしたドラマかと思ってたので正義漢然とした立ち居振る舞い以外にあの話を書かせるに及ぶ欲を生み出す渇望が見えなくて、アウトローな奴ならやるかもしれないって期待だけでマンクにスポットが当てられた気がしてならない。オーソンウェルズと揉めてたけど、じゃあなんであんなに凝ってつくって撮りきったのかが分からない。
映画って脚本家の意地だけで作れないでしょ、傑作を生み出す熱量の説明としては周りを巻き込むだけの説得力にどうしても欠けてる気がする。
例えば体制への批判なら時世の話題にのったうえで出来上がった名作を勢いで世に出したものが大問題になったその過程で映画界の問題が見える様な流れの方が全景が見えてスッと入ってきそうだし、主人公の人生観を描くなら前後が足りない気がする。社会批判的なメッセージに比重がいっていてテーマは雇用主に騙されるな!だった気がして。
新聞王にダーッと言ってのけるシーンも王に好き勝手に言う事が許されていたまさに王様に所有される道化の役割そのものだし、なんだか配給先や前時代的な映画界の体制に左右されないネトフリのドヤ顔演説に感じちゃって…主演女優と仲良くなるくだりもこっちの水は甘いぞ的な誘いに見えてネトフリにネトられ…映画界の余所者オーソンウェルズと嫌われ者のマンクに製作者側を重ねているのかなって思いました。
だとしたら元ネタの元ネタ有りつつも知らなくても見れる普遍性もリスペクトして、何の気無しに見ても残るものがある話として組み立て無かったのか不思議に思う。