劇場公開日 2021年2月19日

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「表現しきれない絶望感」ある人質 生還までの398日 zem_movie_reviewさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0表現しきれない絶望感

2023年8月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

自分ならどうしていただろうか。痛めつけられ、尊厳を奪われ、死ぬことも許されないという地獄という言葉では表現できない絶望感の中にわけも分からずに囚われてしまたら。

事実に則して作品化されている、という前提でレビューします。
体操選手として生きてきた青年(少年?)が怪我をきっかけに人生が大回転します。体操しかしてこなかった青年が目指した職業が写真家。とある写真家に弟子入りし、いきなり混乱/紛争地域での撮影活動に従事します。紛争地域での市民生活に興味関心を強くもったその青年がトルコからシリアの紛争地域に撮影旅行したことでISISの成立前のとあるイスラム過激派組織に囚われてしまいます。本来なら自由シリア軍の勢力下にあったはずの場所でです。

というところから過酷で絶望感しかない捕虜生活、青年の身代金交渉をするエージェントの動き、身代金を工面するために必死に動く家族、口先だけのデンマーク外務省(これは仕方ない)が様々に物語を織りなして一つに向かっていく作りはとてもわかり易いものでした。わかり易すぎて怖かったです。

観終わって、「あー、あの人質の方って結構優遇されていたんじゃないか?」という思いが、冗談や冷やかしではなく湧き上がったことは抑えることができませんでした。彼こそ、あの経験をこういう形なりで世に出すべきではないかとも。

zem_movie_review