「世界平和への道のりはまだまだ険しく」ある人質 生還までの398日 KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
世界平和への道のりはまだまだ険しく
ユーロライブにて試写会鑑賞。
この作品は実話ベースでありこの作品では触れられていないものの日本人被害者も出してしまった事件と関連する為記憶も新しい事件である。
主人公のデンマーク人、ダニエルは体操選手との成功を信じ日々を送っていた所、プレイ中に大きな怪我を負い選手生命をたつ事となる。今後は恋人と生活をするにあたりまともな職に就く事を目指し写真家となる所でストーリーははじまる。
写真家としてこれまでどのような経験を持ってきたのか、そして会社はどういう会社なのか、シリアに行くにあたり豊富な知識や最悪なケースを想定した準備はできていたのか…この辺りは省かれいきなりシリアに行くシーンとなった為このあたりの背景は見えないが、ダニエルはシリアに行き早々にテロリストに捕まってしまう。
まぁこの作品は生還までのストーリーが主となるわけだから仕方ないと言ったところか。
一度は脱出に成功しシリアに住む一般民に助けを求めるも、一般市民はテロリストにダニエルの存在を通報し再度捕虜となってしまう。このシーンの絶望感は見てる側もなかなかのものを感じた。
一方デンマークに残された恋人や家族は中々帰ってこないダニエルを心配する。
事前に何かあった際にある者に連絡するようダニエルに伝えられていた。その者は元軍人で現在は人質球質の専門家として働く者である。テロリストと被害者家族の間に入り交渉するエージェントのようなものだ。
テロリストは億単位の多額な金額を家族に要求する。交渉人は居場所が突き止められいない現状を考えると応じる他ないと判断する。
そのシーンの際一応ドルとクローネの関係性の説明は少しあったが、デンマークの通過に知識がないとここを逃すと1クローネがドルや円に直すとどれくらいのものなのか分からないため以後も鑑賞中しばらくこの単位が気になってしまった。
もちろん一般庶民の家庭であるダニエル家が払える額ではない。もちろんデンマーク政府はテロリストの要求に応じることはできない。
その為保険を解約するなど一個人ができる事は全てやり、その上で募金という形で裕福者や企業から資金を募ろうとうする。
ただこれが名目を変えないとテロリストへの資金集めとなってしまい法に触れてしまう。
その為弁護士を雇いグレーンゾーンの間で資金活動をする事となる。この辺りは勉強になった。まぁ外務大臣だか外務省の責任者も会議には同伴していたし政府としても暗黙の了解なんだろう。
最終的には知人、デンマーク国民、そして大手企業が参加してくれ2000万クローネを集めることに成功しダニエルは解放となる。
ダニエルと共に捕虜生活を強いられていたアメリカ人のジェームズはテロリストに処刑されてしまう。
この事件は記憶に新しく残っている。
最後に彼の葬儀にダニエルは参加し作品は終わる。
この作品において大事になるのは救出の仕方であろう。
このテロリストに捕まった被害者を救出はとても難しい問題である。
映画作品でいえばアジトを見つけ出し、突入しテロリストを薙ぎ倒し救出ってのはよく見るが現実はそうはいかない。
多くは金銭要求をしてくるが、この金銭はテロ活動の資金となってしまう為国が応じないのは十分に理解できる。
では捕まったら自己責任と片付けて人の命を見捨てるのが正しいのか。それは決して違う。彼らのようなジャーナリストがいるからこそ世界情勢を知る事ができ、そして対策が打てる事も沢山ある。
この問題の答えは今作を見てもやはり確固たる答えはもちろん見つからなかった。
ただ最後のエンドロールにてデンマークは現在も国としては救出募金を募る事も法では禁じられているが、アメリカはオバマ大統領時代に法改正し認められている事が伝えられる。
この法改正が救出活動に大きな影響を与えるのかと言われればなんともいえないが、こうして少しづつ解決策に近づいていくしか今はないのであろう。
色々考える事が多く面白い作品ではあったが一つ気になるのはタイトルにある生還までの398日の部分か。
エンドロールでも13ヶ月拘束されていた事は説明されていたが、作品を見ている限りはそこまでの長い間の拘束を感じられなかった。むしろ時間をかけるとダニエルの命は危ないという言葉が交渉人から度々発せられていた事もあり、この件に関してはスピードが大事となりスピーディーに解決した事件のように感じてしまった。
また冒頭にも書いた通り捕まるまでが結構あっさりしてるのは気になった。
ただ拘束間はとても緊張感がありテロリストに対して見てるこちらも激しい憎悪感を覚えるなどとても没入し鑑賞できる作品であった。何時みてもテロリストの言動行動には激しい怒りを覚える。奴らにどんな理由どんな背景があろうと許される事ではなく、一ミリも同情するに値しない。同じ人間だとは思えない奴らだ。
死を前にしたジェームズがテロリストに対して憎悪で心いっぱいになるのではなく、家族を想い愛で満ちた心でありたいとあの状況下でも言葉にする彼の姿はとても心打たれた。あのシーンは個人的にはこの作品で1番好きなシーンであった。