「アメリのロマンティック版?」マーメイド・イン・パリ ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリのロマンティック版?
人間と人魚の恋…だいたい内容が読めるので「素晴らしき世界」と天秤にかけたが、脇役が豪華だと思い、また上映回数減少の可能性の高さから、公開第一週はこちらを選択すべきと考えた。ロマーヌ・ボーランジェ懐かしい!
主人公ガスパールは数々の失恋の痛手から立ち直れず父親のバーでの歌手の仕事もバー買収の危機で40になってもパッとしない毎日。ある日セーヌの河岸に打ち上げられて気を失っている人魚を発見、ローラースケートをトゥクトゥクと交換して病院に連れて行く。人魚を見ても全く驚かず、部屋も人形やらアヒルちゃんやらアメリのような、ミニマリストと対局の可愛いインテリア、想像力豊かな人物とわかる。その病院には医者の夫婦が勤務していて、主人公が受付で交渉している間に夫の方がトゥクトゥクに気づき人魚を診ていると急死。人魚の歌声を聞き恋に落ちると心臓が痛くなり死んでしまうのだ。結局保険証がないと診察不可ということで、人魚は主人公がマンションのバスタブで看病する。人魚なので言葉が通じないかも、と思って英語で喋ったり、冷食の魚のフライをあげたりとお世話する。しかしガスパールが留守の間に勝手に部屋に侵入した隣人の中年女性が置き忘れたタバコを吸って火事をおこしてしまう。一方、愛する夫を亡くした医者の妻は、青い血痕から海の未確認生物が夫の死因だと気づき、ガスパール達を追う。元気になった人魚ルラはしかし、日が2回登るまでに海に戻らないと死んでしまうと言うので、隣人の女性に化粧やオシャレを手伝ってもらって、それまで楽しく過ごすことにする。歩けない彼女を担いで階段を上り下りするのは大変だっただろうな。そうしているうちに去年の失恋でもう恋はこりごりと思っているガスパールも胸の痛みを感じる。実は父親のバーは祖母が戦争中に始めたもので、レジスタンスや芸術家たちを守ってきたものだった。そうしたサプライザーという人達と店を孫のガスパールにポップアップブックと共に託したのだった。最初は頼りない少年のようだったガスパールも、リラと出会って年相応になる。またルラも真珠の涙をこぼす。2回目の日の出と女医の追っ手が迫る中、なんとかルラを海に返す。海に入ったせいで気を失ったガスパールを発見した女医は一瞬迷ったものの、亡くなった夫の導きでガスパールの命を助ける。パリに戻ったガスパールは、ルラの真珠の涙を父親に残して、海に出るのだった。
深いとは言えないまでも、想像力や夢の大切さ、出会いや成長など、恋以外にも色んなことを描いた作品。ジャン=ピエール・ジュネが好きならおすすめ。
主演俳優も良くて、特に人魚役の女優さんの透明感。素顔は鼻を直したクロエ・グレース・モレッツという感じの童顔だけど化粧をすると見事な美人に。
観てよかった。