「「それでもぼくはやってない」って言えよ」私は確信する kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
「それでもぼくはやってない」って言えよ
理不尽な容疑者。死体も見つかってないし、物証証拠が乏しすぎる中であっても被告人を有罪に仕立て上げたい検察側。自白を強要したいという、「疑わしきは被告人の利益に」、「推定無罪」という大原則を踏みにじるかのような展開だ。
10年という苦しめられた被告人ジャックも可哀そうにうつ病になってしまっていたが、それよりも妻の失踪当時は子供だった娘クレマンスや二人の息子が大人になっていたことが痛々しく感じた。どこの国でも冤罪事件は起きるんだなぁ~と、しみじみ。
事件をこじらせたのは被害者であるスザンヌの愛人オリビエ・デュランデ。自分に容疑がかからないようにと、スザンヌの電話帳を使って見知らぬ人にも電話をかける。不利になるようにとジャックの残した証拠を吹聴してイメージ操作をし、それがやがてマスコミにもリークされ、世間をも巻き込む事件に仕立て上げたのだった。
むかつく人物がもう一人。警視だ。たいした証拠もないのにジャックに自白を強要させ、両親をも説得させようとする態度。極めつけは「オリビエこそ被害者だ」とか、証人として法廷に立った言動には呆れ果ててしまいました。そうして二審を中心にクレマンスに家庭教師をしてもらっている息子をもつノラの物語でもあった。
失踪しただけで殺人事件扱いすることにも憤りを感じるが、それでも支援してくれる人がいることで中和され、成り行きが気になってしょうがなくなる作品。夥しい通話記録のCDという証拠は裏工作するオリビエの悪態が集約されていたが、新たな犯人を暴く法廷ではない。ぜってーてめーが犯人だろ!と叫びたくなるような映画でもありました。そもそも死体がないのに殺人事件として立件するところにももやもや・・・