劇場公開日 2021年2月12日

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「疑わしきは罰せずとはこういうこと。」私は確信する はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5疑わしきは罰せずとはこういうこと。

2021年2月27日
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鑑賞方法:映画館

有罪である。無罪である。真犯人がいる。
どこかで生きている。そう私は確信する。

全ては仮説。10年前、夫と3人の子供を残し姿を消したスザンヌ。殺害の罪に問われた夫ジャックの控訴審が始まる。無実を信じる家族と知人でシングルマザーのノラ。ノラの依頼を受けて弁護を引き受けた敏腕弁護士デュポン=モレッティ。一方有罪ありきの裁判は仮説が積み上げられマスコミも世間もその罪を疑わない。

250時間に及ぶ膨大な通話記録を調べるノラ。疑惑の人物が次々と浮かび上がり、真犯人はスザンヌの愛人だと突き止める。しかしこれも仮説でしかない。

遺体もない。目撃者もいない。自白もない。ジャックが犯人だという証拠も犯人ではないという証拠もない。「疑わしきは罰せず」正義とは何か。陪審員の心情に訴えかけるクライマックスの法廷シーンは見応えがあったし、胸が熱くなった。

ただ、フランスで有名な裁判が元になっていることもあって、知ってて当然でしょって前提の前半は正直理解できなくてかなり辛かった。フランスの方の名前も馴染みがないので、あれ?これさっき言ってた人の話なんかな?とか。あと、自らの生活を犠牲にしてまでのめり込むノラには共感できなかった。その正義感が時に物事の本筋を曲げてしまうかもしれない危うさ。とにかく何があっても息子を放ったらかしにしないで。

確信が新たな確信を生む。結局スザンヌはどこへ消えたのだろう。一番大切なことは何も分からないまま。
裁判は終わり、真相は闇に葬られる。

はるたろう