劇場公開日 2021年2月12日

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「実話だけに最初からネタバレなのに、台詞だけでものすごく見せる。」私は確信する 高武蔵守師直さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0実話だけに最初からネタバレなのに、台詞だけでものすごく見せる。

2021年2月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

もうちょっと含蓄ありそうな邦題はつけらんなかったもんかな、「私は確信する」。
簡単にいえば「フランス版ロス疑惑(三浦和義事件)」みたいな、妻が行方不明、夫はヒッチコックのファン(マニア?)らしい。夫婦仲はすでに破綻、妻には堂々と愛人がいる。
これはやったな、って世間はみんな思う。証拠は何もないけど、報道は過熱する。メディアスクラムってやつ。旦那さん追い詰められる。そこで主人公の女性が立ち上がって、彼の無実を証明しゆとして、「ヤリ手の有名弁護士」に依頼する。
この女性主人公は架空の人物だけど。他はみんな実在の人物 、ってもの凄いけど。

この映画はフランス人はみんな知ってる実在の事件をもとにしてるってことで、最初からネタバレ映画なんで、結末どうなるんだ、ってワクワクして観てると肩透かしを食うかも、
これがフィクションのドラマなら、ラストで「真犯人」が判明するんだろうけど。この映画は「事実に基づいている」ので、そうはいかない。だいたいこの「疑惑の夫」は鬱病だといって映画の中でもほとんど喋らない。だから、依然として、この夫がやっぱり殺人犯なのかも、という可能性も、否定はしていないんだ。
ただ、「そうじゃないんだ。証拠がなければ無罪なんだ(つまり推定無罪)」ってことを、この弁護士は皆に(主人公にも、裁判官や陪審員にも、社会にも)分からせなきゃならんわけで、そこは一筋縄ではいかんわけです。
実はこの「妻失踪事件」は、いまだに解決してない。遺体は発見されてないし、「夫じゃなければ、じゃあ誰だ」ていうのも明らかになってない。なのに映画にしちゃう、けっこう凄いとこするな。

ずーっと主人公の証拠集めと、裁判所のシーンばかりが続く。おきまりの「再現映像みたいなシーン」は一切出てこない。ストイックだ! でもそこがリアルともいえる。
弁護士と主人公はしばしば対立する。それは「真犯人を挙げてギャフンと言わせてやる」という主人公と、「依頼人(夫)を無罪にすることだけが目的だ」という弁護士の、アマとプロの違い、ともいえる。だから、協力しながら、時には激しく対立する。そのへんが面白い。

高武蔵守師直