「【推定無罪、もう一人の自分】」私は確信する ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【推定無罪、もう一人の自分】
この法廷劇中心の物語は、通信録音を解析するもどかしくもサスペンスタッチな仕立てで、ウソだと推測される証言、安易な警察・検察、捏造されようとしている犯行、群がり煽るメディア、早期決着を目指す裁判所などフランスの司法制度の問題を炙り出すように進行する。
焦点のひとつは、推定無罪が成立するか否かだが、もう一つは、弁護士モレッティの葛藤だ。
(以下ネタバレ)
職責は、あくまでも被告の弁護。
犯人探しは範囲の外だ。
だが、検察側の証言者に疑わしき者が出てくる。
でっち上げの共謀、拡散されるフェイクニュース。
それに疑念を抱くどころか、通信記録のチェックさえ行わず、審理を急ぐ検察や裁判所に不信は募るばかりだ。
しかし、こうしたフラストレーションは、映画では、モレッティのもう一人の自分、フィクションのノラを通じて表現されているのだ。
映画全体を通してみると、実在のモレッティは、ジャックを無罪に導いたという自身のストーリーより、現代社会やフランスの司法制度の問題をより強く問うているように思う。
日本の刑法は、フランス刑法典を基本としているので、冤罪事件のことを思い返すと、同様な問題はないのかと心配になったりする。
地味目の作品が、推定無罪とは何か、冤罪は防げているのか、私達の司法制度は問題なく機能しているかなど、結構考えさせられる作品だった。
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