KCIA 南山の部長たちのレビュー・感想・評価
全112件中、61~80件目を表示
2021-1
韓国映画見ながら、顔中のシワを眉間に寄せたい方(私)へ。
新年初の劇場映画。いやー長かった。
私のレビューではお馴染みの、同僚の韓国人お姉さんと一緒に。
最近の韓国ノワールや韓国サスペンスで思い出すのが、『工作 黒金星と呼ばれた男』。
ずっと眉間にシワを寄せながら、頭をフル回転させているのに、時間を感じさせず、気づいたらエンドロールを迎え、心も体も持っていかれるあの感覚。
その『工作』でキーマンを演じていたイ・ソンミンさんが、本作でパク・チョンヒ大統領を演じているのですが、、、ソンミンさん、すごすぎますよ。また持っていかれました。
上司と部下。男と男。戦友。
国のトップと、国の情報戦のトップの男の間で揺らぐ、脆い感情がこちらにも伝わってくる。
二人は同じ志のもと、革命を起こした。
同じ酒を交わしながら、あの頃はよかったと回顧した。
キム部長が夜に一人残業していると、大統領が、酒でも飲まないか、寂しいから、と部屋を訪れる。
そういった描写が心の中に刻まれているから、暗殺を決行すると決めた宴のシーンが心にガツンと響きます。
またエンドロール後は『工作』状態。
やっぱり韓国映画、すごい。
人の心の暗い部分や弱い部分をまざまざと見せつけられる。
そして40年前の大統領暗殺事件(たった40年前の韓国だということも驚きだけども)を扱った映画が、昨年の韓国での興業収入1位というのも興味深い。
(原題) 남산의 부장들
非常に複雑で未解明部分の多い事件を、ここまで分かりやすく整理した手腕に脱帽の一作。
本作は、韓国の朴正熙大統領暗殺事件に基づいています。作中のほとんどの描写は、同事件を忠実に再現しているのですが、登場人物は全員仮名としており、一応「事実に基づいたフィクション」という体になっています(本作に登場する大統領のみ、「朴大統領(閣下)」と呼ばれてはいるが、下の名前までは呼称していない)。
それでは事件の前知識がないと、あるいは韓国の政治サスペンスに興味をもっていないと本作に入り込めないのかというと決してそのようなことはなく、「かつて韓国で強権的な大統領の暗殺事件があった」、という程度の情報があれば、十分に楽しむことができます。
というのも、本作では主要な登場人物をかなり絞り込んでおり、物語は大統領と、彼に忠誠を尽くすあまり反目し合う情報機関の責任者(主人公)と、大統領警護の責任者のほぼ三名で展開していくという思い切りの良さ。しかも画面内の立ち位置や距離感で、一体誰がどのような思惑を相手に抱いているのかが一目でわかるようになっています。複雑で分かりにくいどころか、ほとんど説明過剰と思えるほどに配慮の行き届いた脚本、演出となっています。
権力を握る男同士の、ほとんど恋愛に近いような情緒のぶつかり合いは、同じく韓国の作品『工作 黒金星と呼ばれた男』でも重要な物語の構成要素となっていましたが、本作の方は大統領への思慕が対立の起因となってしまっています。
『鬼滅の刃』の、いわゆる「パワハラ会議」よろしく、本作の朴大統領による部下への詰め方が、言葉の使い方の悪辣さとか、実にうまいなと…(ほめてない)。彼の言動は、パワハラにうんざりしている人にとっては、結構きついかも知れませんね。
作品に登場する、ある食べ物など、さりげなく登場する小道具にもいろいろと深い意味があったり、映画的な演出に見える描写が実は事実を忠実に反映していたり(あるいは全くのフィクションだったり)するので、鑑賞後は原作を読んであれこれ発見してみると面白いかもです!
1979年の”本能寺の変”
イアーゴ
朴正煕暗殺に至る経緯を描いた佳作
韓国の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領。
ちょっと前に大統領をやっていた朴槿恵(パク・クネ)のお父さん。
私は韓国の歴史は詳しくないので、戦後の韓国政治がどんな風に推移してきたかを知らない。それを知ろうと思う、良いキッカケとなる良作だった。
韓国は戦後ずっと軍政だったんだな。。
これを書いている2021年2月現在、ミャンマーで国軍がクーデター起こして大騒ぎになっているが、軍人が政治やっても良いことなど何もない。それはこの数百年の歴史が証明している。しかし、韓国では1987年に盧泰愚(ノテウ)大統領になり、ようやく民主化が実現できたのか・・まだほんの30年前じゃないか。
私は今45歳なので、私と同じ世代の韓国の人なら軍政時代を知ってることになる。韓国では政治デモが盛んだが、長い苦しみの上に勝ち取った民主主義だからこその行為なのだろう。日本の現状と比べると何とも自分達が情けなくなるが。。
この映画では、その朴正煕暗殺までの40日間を描いている。
主演のイ・ビョンホンがまた渋い。良い俳優さん。
当時の中央情報部(KCIA)部長で暗殺を実行した金載圭(キム・ギュピョン)を演じている。キム・ギュピョンはその後死刑になるが、この映画の最後に本人の音声が流れる。これがまた素晴らしい。韓国内で再評価されているらしいが当然だろう。
周りの俳優の演技も本当に良かった。
しかし、韓国映画のレベルは明らかにもう日本を超えてるな。最近のテンプレ化した日本映画など、アニメ以外は観る気がしないもんな。。日本の俳優って、アイドルがテレビで有名になったついでに俳優やる、とかばっか。全然違う仕事なのに。韓国では、というか、他国ではその棲み分けは当たり前にやってるだろう。映画の音楽も感動を強要するテンプレ音楽でホントに観る気が失せる。
韓国の映画界は、黒沢・小津監督時代の昔の日本に似た状況なのかもね。
そのまま変な方向に曲がることなく、良い作品を生み出し続けてもらいたいものです。
【"あの頃は良かった・・。" 軍事国家の道を再び突き進む国を憂い、哀しむ"革命家"の苦悩する姿を描いた作品。全編を覆う緊迫感が尋常ではない作品でもある。】
- 冒頭、今作品は"フィクション"である、というテロップが流れる。
朴正煕大統領暗殺事件の真相は、今だに闇の中だからである。-
■今作品の印象
・金載圭韓国中央情報部長をモデルとした役を演じたイ・ビョンホンの深い憂愁を湛えた表情。彼が笑顔を浮かべるシーンは、作り笑いのシーンのみである。
彼が、第4代韓国中央情報部長だったパクが亡命したアメリカに渡り、彼が朴大統領を批判した原稿を持ち帰るも、徐々に朴大統領の信頼を失い、クァク警護室長に大統領の”信頼”が移っていく様を見る哀し気な表情。
・全編を覆う尋常ではない緊迫感。朴正煕大統領の行く末が分かっていても・・。
・朴大統領の孤独感を現す、酒に酔って、詩を読むシーン。
組織のトップは"得たいの知れないどす黒い孤独"を、常に感じているのであろう。
だから、彼も、嘗ての”革命の志”を長期政権を維持する中で失っていくのであろう。
朴大統領を演じたイ・ソンミンは「工作 黒金星」で、瞠目した俳優であるが、今作の演技も凄かった。
且つての革命家としての自分と、保身に走る現在の自分の姿を比較し、諦観したかのような表情。そして、時に檄する表情、声。
◆今作の真相は、一般的には映画のラストでテロップで流れた事になっているのであろう。だが、金載圭の肉声
”革命家として、民主主義を・・”
を聞くと、もしかしたら・・、と思ってしまった作品。
そして、それが真実だったとしても、朴大統領の後に韓国の実権を掌握した全斗煥は民主化運動を弾圧した”光州事件”を起こし、多数の市民が虐殺されている。
「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」で、詳細が描かれた事は記憶に新しい。
何とも空しい・・。
<韓国映画は、近年でも、多くの優れたポリティカル映画を排出している。
(上記2作や「1987、ある闘いの真実」は秀作だが、イケメンのチョン・ウソンが欲に塗れたソウル中央地検の部長検事を演じた「ザ・キング」も好きでした。)
お国柄の違いなのだろうか。
それにしても、歴代の韓国大統領の最期は悲劇的なモノが多い。
全斗煥は、無期懲役となり、盧泰愚は懲役17年(のち、減刑) 盧武鉉は自死 朴正煕の娘である、朴槿恵も生きて獄から出て来れないであろう・・。
大統領に、権力が集中し過ぎる政治構造が原因だが、それにしても多すぎないか・・。>
■蛇足
<部長と室長は仲が悪い問題>
今作でも、金載圭韓国中央情報部長と、クァク警護室長との確執が多くの場面で描かれているが、実組織でも似たような事は多いのではないだろうか?
因みに、私は今作の様な”上に媚び諂う”室長は、本人とお話しして、適材適所な部署に行って貰う事にしている。
そのうち、宴会の場で、銃で撃たれちゃうかな?
(撃たれたら、”なんじゃこりゃー!”と言うつもりです。)
すいません・・。
自分の無知に嘆く
子供じみた嫉妬と疑心暗鬼が暴走するずっしり重いポリティカルフィクション
1979年、アメリカに亡命した韓国の諜報機関KCIAの前部長パクが下院議員聴聞会でパク・チョンヒ大統領が今までに行なってきた数々の不正行為を告発した。激怒した大統領はパクの後任の情報部長キムに事態を収拾するよう指示、渡米したキム部長はパクに接触するがそこで自身の与り知らぬ政治的な動きがあることを知らされ動揺する。
実録ドラマであるかのような緊迫感で暗殺事件が起こるまでの40日間をスリリングに活写したポリティカルフィクション。大統領とキム部長が酒席で交わす短い会話で二人の断ち難い友情を垣間見せているので、強大な権力を持つことで逆に誰も共感出来ない深い孤独感に苛まれる大統領の焦燥、純粋な愛国心と忠誠心があるがゆえに大統領の意に沿わない忠告も辞さないキム部長の苦悩に終始深い陰影が宿っています。大統領が自身の権力を誇示するために呟く犬笛が劇中で何度も何度も繰り返され、米国政府の干渉や自国政府内でのパワーゲーム、そして子供じみた嫉妬で男達が窮地に追い込まれていく様は圧巻で、冒頭で暗示される終幕から走り去るリムジンが照らし出すその後の顛末が鉛のように重いです。
自国の歴史の暗部も容赦なく描写してのける韓流映画の奥深さには驚異しかないですが、おまけ程度にしか登場しないワシントンやパリのロケにも短編映画でも撮影するかのような人材を投入し、40年以上前の空気感を精緻に再現することにも一切妥協がない点も特筆すべきところ。キム部長を演じるイ・ビョンホンと大統領を演じるイ・ソンミンが見せる張りつめた神経戦は場内を凍りつかせるかのように冷たく、特にイ・ソンミンは『目撃者』や『工作 黒金星と呼ばれた男』とはまた全然異なる人物像を体現していて、その演技力の幅広さに戦慄しました。
感情を押し殺した男の爆発した時の凄み!
雑観
韓国の歴史について予習してから見ましょう
パク大統領の右腕であるキムKCIA部長がパク大統領の暗殺に至る40日間を描く物語。
歴史が非常に苦手な私にとっては、前半はいまいち理解できず。韓国の近現代史や朴正煕暗殺事件についてざっと予習してから観るのがおすすめです。
一方、後半で一気に引き込まれました。パク大統領が汚れ仕事を「暗黙」の命令でやらせておいて、はしごを外してその責任は部下のせい。時に部下の機嫌をとることもある。そうして懐柔・突放しを繰り返した結果、愛想をつかされるという普遍的な組織の揉め事を描いていて、歴史関係なく人間ドラマとして楽しめる。殺す決意をしてからの怒涛の展開には熱くなった。
真剣に作りこんであるクオリティーの高い映画であることは確かです。
本能寺の変〜コリアンバージョン
全112件中、61~80件目を表示