KCIA 南山の部長たちのレビュー・感想・評価
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自国の暗闇にメスを入れる韓国映画人の英明さ
映画『KCIA南山の部長たち』を観る。
1979年に韓国で起きた朴大統領暗殺事件は当時、日本でも側近による射殺という表面しか伝わらない謎多き事件だった。
それから30年を経て、長女のパク・クネが大統領になった時でさえ、朝日の天声人語は凶弾に倒れた家族の不屈の物語として伝えた。
しかし、その英雄譚は数年で地に落ち、新たな苦難の歴史が始まっている。
そう、、隣国では死闘の末、権力を勝ち得、そして、そして最後は敗北して行く。
日本のように仮病で楽隠居出来る訳は無く、検察、メディア そして市民が声を上げて、権力から引き釣り下ろす。
それは20年にいっぺんフランス革命をしているようなものだ。
牢獄に収監される、嘗て指導者を見ると、そこまでしなくても、、という気持ちになるが、主権者は国民なのだと気付かされる。
しかし、この41年前の暗殺事件だけは、個人の営為
その自国の闇を丹念に掘り起こし、外国人にも見れるようなエンターテインメントに仕上げて、それが2020年度 最も多くの観客を得たという事実に韓国映画界の深さと観客の聡明さを感じざるを得ない。
劇中 朴正煕 と部下(暗殺者)キム・ギュピョンが大日本帝国陸軍 時代に仲間だった時を思い出して 「あの頃は良かったな」と述懐するシーンがある。
この映画で、そのシーンにはハングルの字幕が出る。
何故なら 彼らは 日本語で それを語り合うから。
ここに 韓国の混乱のルーツに日本が深く関わっていた事に気付かされた。
青瓦台に「麒麟」は来たのか
79年当時の東西冷戦状況下の朝鮮半島情勢や長期軍事政権下の市民感情など韓国の人にとっては当たり前の前提条件が求められるものの、その理解はなくても政治サスペンスとして相応に楽しめるはず。
物語が展開するなか、金 載圭氏の追い詰められた末の行動がかの「明智光秀」に重なって仕方がなかった。ライバルたちの闘争の末に権力が転がり込んできた全 斗煥はさしずめ「豊臣秀吉」といったところか。
当たり前のことだが、本作は史実をベースにしたフィクション映画である。
当時KCIA部長であった金 載圭氏が朴 正煕元韓国大統領を暗殺したという事件だけが真実であり、金 載圭氏の動機含めた因果と犯行のプロセスはあくまで想像の域に過ぎない。
韓国内でもの金 載圭氏の評価は分かれているようだが、少なくとも本作制作サイドは朴の長期独裁政権時代の打破に一石を投じた彼の行動をいくぶん好意的に評価して描いている。
冷戦下、東側のみならず西側が支援する東南アジアやアフリカ諸国政府の軍事独裁体制を米国政府および情報当局が直接間接問わず積極的支援してきた史実と、世界は今そのツケを払わされている事実を忘れてはいけない。
社会派の作品は群を抜いて優れた作品を世に送り出す韓国映画界は、政治モノになると途端にその矛先が鈍ってくるのは気のせいか。まあ、社会モノも政治モノも韓国に大きく後塵を拝する日本映画界よりはマシであろうが。
史実を捻じ曲げた低レベルの商売映画
彼は英雄なのか?
A man's path isn't always filled with laughs, but a storm can
not stop a man with determination
子供が野球よりもサッカーに憧れ、地上波では見れなくなった原因を作ったトレード問題や女子はテンポの良い曲で太ももをあらわにする開脚ダンスを踊り、 のび太さんは、大学入試に失敗した。そして一大イベントの第2次オイルショックなのに浮かれていた日本の1979年... お隣韓国では、「漢江の軌跡」という30万人を超すベトナム人を虐殺した戦争を土台に日本とは今ではティッシュペーパーよりもペラペラな "日韓基本条約" を批准し11億ドルを勝ち取って経済復興を成し遂げた英雄であり、また民主化を遅らせた強権の方でもあるパク・チョンヒ大統領暗殺の40日間を描いている本作『KCIA 南山の部長たち』
You too, Brutus, my son!
パク・チョンヒ大統領暗殺を描いた2005年のシニカルなブラック・コメディ映画『The President's Last Bang』でも日本人とされる女性演歌歌手の曲をスボンという役名の女性が弾き語りで歌うシーンがある。それと同じように中央情報部部長キム・ジェギュとパク大統領が日本語を話すシーンは、ある意味彼らが戦時中に日本の軍事訓練を受けていて、韓国の方からすると売国奴的なイメージもあり、また映画の登場人物の名前が改変されているのは、前出の映画『The President's Last Bang』で訴訟を起こされた経験に基づいている。
中央情報部部長キム・ジェギュとパク大統領とは同郷でしかもパク大統領がKCIAの部長まで引き上げた側近中の側近の裏切り...
Cambodia killed three million people, is it such a big deal if
we kill one or two million?
本作品でも作中に話のネタとして登場する思想・芸術などの運動で、その先頭に立って活躍するイアーゴーを『オセロ』の凶悪な悪役として認識するかもしれない。 嫉妬、裏切り、政治的闘争に満ちたとされるシェイクスピアの四大悲劇の一つ。映画の原題名『The Man Standing Next』からするとその人物は誰なのかをシェイクスピアの『オセロ』を直接適応させるわけではなくても演劇から一般的なインスピレーションを受けることができるかもしれない。
韓国としてはキム部長を暗殺後、直ぐに処刑しているので、彼の直接的な動機はうやむやになっているとされている。狂人の発作的な行動なのか? それとも国の民主化を進める英雄なのか? 本当のところは藪の中とされている... "heartthrob" と呼ばれるイ・ビョンホンがKCIA部長キム・ジェギュを演じているという事は同情的な描写や背景を得て彼は悲劇的かもしれないが、まだ英雄である描き方をされている。彼はパク大統領と大統領の側近による民主化デモを激しく抑圧する計画に反対し、「カンボジアは300万人を殺した。我々が100万人か200万人を殺すならば、それはそんなに大きな問題なのか?」とうそぶく言葉に反応する... 韓国で最もハンサムな俳優の一人であるイ・ビョンホンをキャスティングしたことでキム部長のイメージも傷つけることはなくなり、彼は民主化の英雄として描かれる。
この映画は韓国の内向けの作品というよりもヒッチコック監督が描くスパイ・スリラー映画の持つハリウッド向けに作られた映画と言えて、アップテンポなプロットと二重交差するシナリオに国家の安全をも揺るがす人による裏切りをスリリングな演出で描いているのでオスカーの外国映画賞に韓国代表として選ばれたのが分かるような気がする。
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