劇場公開日 2021年1月22日

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「クァク室長のガニ股が気になった・・・」KCIA 南山の部長たち kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0クァク室長のガニ股が気になった・・・

2021年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 長期独裁政権は腐敗するものだという一般的な流れをそのまま行っていたパク軍事政権。イ・ビョンホン演ずる中央情報部部長キム・ギュピンは大統領に命じられるまま、ワシントンやパリに赴いて、元部長であるパク・ヨンガクの論文を押収したりするのだが、それは表の論文であり、隠された裏の組織の存在(イアーゴという暗号名も)や資金洗浄の真実を知らされ、徐々に疑心暗鬼に陥ってしまう。

 パク・チョンヒによる軍事クーデターのことを彼らは“革命”だと言ってたし、自らの理想を実現したと思い込んでいたキム部長。絶対的権力の大統領の側近であり、事実上ナンバー2の権力を持っていたが、大統領が野党党首をクビにしたことによるデモ多発やその弾圧を目にし、民主国家とは違うと感じて心が揺れ動く。特にクァク室長の戦車を使ってのデモ鎮圧には相当頭にきていたようだった。

 KCIAという存在は民衆を押さえつける恐ろしい諜報機関だという認識しかなかったのですが、その内幕を垣間見た気分にさせられた。資金洗浄の謎やイアーゴの存在は謎のままにされたけど、これらをめぐるキム部長の葛藤が見事で、やがて民衆を弾圧することの理不尽さに正義感を芽生えさせ、40日間の行動心理に迫った作品。結局はこの事変によっても民主化は進まず、新たな軍事政権が誕生したという虚しさも伝わってくる。

 残念な点といえば一般市民の姿がほとんどなかったこと。市井の人々はどう思っていたのか。釜山での暴動だけはリアルだったけど、あまり人の姿が見えない。下手をすれば、ギュピンによる新たな独裁の始まりともとれてしまうのだ。それでも彼の人間らしさは表していたし、実際の映像や音声によって人となりが見えてくる。また、血の海となった宴席で滑ってころぶシーンがリアリティを増していた。

kossy