「北朝鮮、ひとりぼっち」分断の歴史 朝鮮半島100年の記憶 taroさんの映画レビュー(感想・評価)
北朝鮮、ひとりぼっち
本作は1部と2部に分かれている。1部は植民地解放から両国家の樹立、朝鮮戦争、70年代の対立までが映し出される。こちらは教科書的で、新たな発見はなかった。2部は、韓国の民主化から冷戦の崩壊、その後の韓国と北朝鮮をはじめとした、アメリカ、中国、ロシア、日本を含めた関係諸国の駆け引きが時系列で映し出されていった。こちらも教科書的で特に新事実があるわけではないが、朝鮮半島の情勢がどんな経緯で現在の状況に至ったのかがわかって興味深かった。
強く印象に残ったのは北朝鮮の孤立振りである。冷戦終結後、ロシアや中国との結び付きは希薄になり、中国は経済的に繁栄してきた韓国との関係作りを始める。一方ではアメリカに「悪の枢軸」と名指しされ、38度線のすぐ近くでアメリカ・韓国の大規模な合同軍事演習によって威嚇される。北朝鮮からしたら核武装したくなるのも無理はない。北朝鮮の核武装を批判するだけではなく、なぜ彼らは核武装するのかという背景を知ることが大切だと感じた。実際核武装することで初めてアメリカと北朝鮮に外交チャンネルが生まれるという現実が映画でも提示されていた。
今や北朝鮮は隣近所に友達のいないひとりぼっち状態だが、考えて見ると韓国と日本も隣近所に友達はおらず、遠く離れたアメリカ頼みでご近所付き合いを有利に運ぼうとしている。一人でハリネズミの如くピリピリしている北朝鮮を哀れむほど立派な立場でもない。
しかし、それでも韓国の人びとにとって、怒ったハリネズミのような隣国はバッシングしていればいいという相手ではない。北朝鮮に対する恐怖心も親愛の情も、日本人とは比べものにならないほど深いのだと思う。そうした複雑な国民感情が、太陽と北風の間を揺れ動く韓国政府の対北朝鮮政策の背後にあるのだろうと察せられた。
他にもいろいろ考えさせられた、良い意味で教科書的なドキュメンタリーであった。