「忘れたくない今の気持ち」エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット JJJJJさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れたくない今の気持ち
関係者は皆、菅谷さんのつくるアートワークに裏切り込みの信頼を寄せておりましたが、私も本作(=菅谷さんの世界観)に自分の心を全面的に預けることができました。その心地良さは映画館を出た後も私を優しく包んでくれました。
私の中でクリエイティブとは一言でまとめると「ズレ」であり、菅谷さんはそのズレをナチュラルに生んでいると思いました。PUNCHIのボルトが良い例で、一見理解できず「!?」となりますが、菅谷さんの頭の中ではストーリーが完成されていて、話を聞けば聞くほど最終的に「バカじゃねぇの(笑)」と見る者を最高な気持ちにさせてくれます。
その根幹となっているのは菅谷さんのプロダクトポリシーである「手触り感」です。現代はどの業界もテック形の人がリードする時代で、私もその方々の考え方を日々参考にしています。ところが私自身はデジタルな能力が皆無で、DXの恩恵を受けているだけの"何者にもなれない人間"です。その反動もあってアナログな感覚は大事にしており、アナログな感覚の延長線上に自分の個性があるのだと思っています。菅谷さんのプロダクト風景を見ていると背中を押してもらえたようで、アナログな感覚をより大事にしようと思いました。
また、菅谷さんは閃きを形にする技術も素晴らしく、その過程を垣間見れたのは大変貴重でした。アイデアなんて誰でも浮かぶもので、それを形にできる人は限られ、さらに菅谷さんのように"裏切れる"人は一握りです。それも外注せず自身の手で完結させているところがますます魅力的。私も撮影クルーに混じり菅谷さんがクリエイトする空気を間近で感じたかったです。
アーティストのドキュメンタリー映画には途中で苦労話が付き物ですが、本作にはそれがなく必要性もないですね。エンドロールの音楽も管谷さんの作品のようにカッコ良さと温もりの両方を感じました。
娯楽映画ではないけれど独特な娯楽風景を映し出す究極の娯楽映画でした。
個人の思い入れもあって⭐︎5つ!!