「何故30分ちょっとの尺にしたのかが謎で短い尺が惜しい作品です。」そこにいた男 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
何故30分ちょっとの尺にしたのかが謎で短い尺が惜しい作品です。
「岬の兄妹」が近年の邦画作品ではかなり気になる作品で、その片山慎三監督の新作とあれば、やはり気になって観賞しました。
で、感想はと言うと…う~ん…
短編作品だからでしょうか、内容に特に捻りもなく、普通に終わっている。
簡単に言うと惜しい。これが1時間近くの尺があれば、もっと盛り込めてたし、もっと膨らませられたと思うだけに惜しい。
何故、33分と言う尺にしたかが知りたい。
なので、アップリンク渋谷で観賞したのですが、1,300円のチケット料金が少し高く感じました。
ストーリーはいきなり血まみれの男が全裸でエレベーター前で倒れていて、そこに座り込みながら電話をする紗希。
ショートストーリーとして、オープニングからのカマしはオッケー。
取り調べ室で経緯を淡々と語るのも悪くない。
だが、設定に特に捻りも感じられず、イケメンだか売れない俳優の性悪の男、翔に引っ掛けられた映画製作の現場ADの紗希の転がる様に刺される迄を描いているが、ホントにストレートに進んでいく。
33分と言う尺なら盛り込めないのも分かるが、もっと紗希の心情を丹念に描いた方が良いと思います。
男女の仲なんて、当の本人達しか分からないし、刺した本人のそこに至るまでの経緯はそれこそ本人しか分からない。
だからこそ、持っと紗希の心情を描いて欲しかったし、そこにもっと紗希の変化を促す様ないろんな事を盛り込んで欲しかったかな。
また、作品の解説に「事件にいたる全貌が明らかになる過程で、女たちの切なく狂おしい純愛の形を描き出していく。」と書かれてますが、そこまでではなく、また紗希以外の翔の嫁の心情は殆ど描かれていない。
身体にいたずらで落書きを書くのは面白いとしても、翔の嫁の気持ちは最後に取って付けた様にも感じますし、紗希の刺す衝動も少しチープに感じる。
もっと翔の嫁を描いていたら変わっていたかな。
全裸でありながら、モザイクを使わず、見えそうで見えないギリギリの描写なんか面白いし(男性なのが残念ですがw)、ラストのラジオから流れるFMのトラフィック・インフォメーションで終わるのとか粋な拘りとか良い感じ。
随所に片山監督の拘りがあるのになぁ。
あと、取り調べをする女性がケバい!w
場末のスナックのオバちゃんみたいで、なんであんなオバちゃん刑事を入れたのかが謎。
変な違和感が出るし、相棒の松浦祐也さんがなんか浮く感じになってしまって、意図が分からんです。
岬の兄妹では、世の中の歪みを描いた片山監督ですが、片山監督の良さは社会の歪みの中でもがき苦しみながら、前に向く気持ちを赤裸々に描く所かと思います。
この作品が30分ぐらいの尺で収めたのが悔やまれる。
勿体無いし、惜しいなぁと思える作品です。