「【"最近、長年連れ添った相手の本音を聴いた事はあるかい?" 妻帯者には、身に染みた”アキ風味”溢れる不器用だが、温かい夫婦愛を描いた作品。】」声優夫婦の甘くない生活 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"最近、長年連れ添った相手の本音を聴いた事はあるかい?" 妻帯者には、身に染みた”アキ風味”溢れる不器用だが、温かい夫婦愛を描いた作品。】
-私が、家人の"本音"を聴いたのは、いつ以来だろう・・。-
◆ソビエト連邦崩壊後、多数のロシア系ユダヤ人達が新しい、より良き生活を求め、イスラエルに押し寄せた・・。
-冒頭の飛行機の中の彼らの不安と期待が、綯交ぜになっている顔、顔、顔が、印象的である。そして、今作品がアーティスティックな映画である事も何となく、分かる。-
◆60歳を越えたフレンケル夫妻も然り。旧ソビエトでは、映画の吹き替え声優だったが、新天地では、なかなか良い仕事がない。
妻のラヤは、夫のヴィクトルには"化粧品の電話販売"と言いながら、テレフォンセックスの仕事に付き、巧みな声色を武器に"マルガリータ"として、働き始める。
- マルガリータと話すと、"生きている実感が得られる"と言う吃音の男と、マルガリータが彼と三匹のイルカのモニュメントの下で会う約束を交わし、ラヤが男の姿を近くのカフェから見ているシーン。
そして、男がラヤがマルガリータと知らずに、楽しそうに話すシーンが印象的である。
相手の身元が分からないからこそ、気軽に話せるのであろう・・、この二人にとっては・・。
そして、男の車で仕事場近くまで送って貰ったラヤは、親愛を抱いた男に突然キスをするが、驚いてしまう男。
そしてラヤが男に低い声で"私がマルガリータだよ・・"と告げるシーン。
怖くて、悲しいシーンである。-
◆ヴィクトルにラヤの本当の仕事が、バレてしまい、二人は別々に暮らす事に。
- 仕方がないのかな?
ヴィクトルは妻に優しい言葉をかけられないのかな・・”僕の稼ぎが悪くてすまんな・・”とかさあ・・。-
◆フセインのガス爆弾が、イスラエルを襲うシーン。懸命にラヤを探すヴィクトルの姿。
ー やっぱり、ヴィクトルはラヤが大切なんだよね。
そして、ラヤもヴィクトルが関わったロシア語版「8 1/2」を観に、映画館に来ていたしね。-
<長年連れ添っている相手とは、つい本音を交わさなくなってしまう。それは、言わなくても、気持ちが通じるからだ。だが、たまにはキチンと声に出してお互いの本音を言いあう事の大切さに気付かせてくれた作品。>