「【行き場を失った声】」NO CALL NO LIFE ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【行き場を失った声】
今、現在、最も暗い社会問題を題材に、若者の孤独や、寄り添ったり、本当は前向きであろうとする気持ちをフィーチャーした佳作だと思う。
予想より迫るものがあって、僕は良かったと思う。
もし、行き場を失ってしまった過去の自分や友人から電話があったら、一番良い道筋を示してあげられるだろうか。
大人になっても、それを隠して自分の奥の深いところに閉じ込めたままだったら、良い道筋なんて示せっこない。
その苦悩はずっと続くのだ。
感情や怒りを封じ込めてしまったような有海と春川。
どこか遠くを見ている感じが、孤独を感じさせる。
DVやネグレクト、性的虐待は社会として解決すべき問題で、様々な理解が広がらないと道筋は見えてこないと思う。
昨今の、男親の娘に対する性的虐待の無罪判決などを見ると、もっと法制度を拡充させないとダメだと感じるし、それは、ネグレクトも同じだ。
親が子供を殺めてしまう事件は後をたたない。
行き場を失った声は、行き場を失ったままでいいわけがない。
本当は、助けて欲しいと伝えたいのだ。
そして、行き場を失った声は、同じように行き場を失った声と助け合ったり、励ましあったりすることは叶わないのだろうか。
有海と春川に投げかけられる、お前たちは、欠けているところが同じだと云う言葉は、傍観しているだけで、対処しようとしない僕たちの社会の不寛容さのようにも感じる。
それほど、僕達の生きる世界は、不寛容なものなのか。
この物語の結末は切ない。
だからこそ、僕達には想像力が求められているように感じる。