「ささやかなシアワセによる新しい繋がり」川っぺりムコリッタ 玉川上水の亀さんの映画レビュー(感想・評価)
ささやかなシアワセによる新しい繋がり
「かもめ食堂」の荻上直子監督の最新作は、美味しそうな食事と「ささやかなシアワセ」で満たされている。
だからといってノー天気な映画ではなく、「 光あれば影あり」と言われるように、モチーフとなっている「遺骨」が象徴する「死」が、作品に影を投げ掛けている。
北陸の小さな町に訳あって引っ越してきた山田は、職を得たイカの塩辛工場の社長から紹介された川沿いに建つアパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始める。
出来るだけ人と関わらずに生きていこうとしている山田だが、隣の部屋に住む島田が毎日のようにやって来て、静かな日々は一転してしまう。
そんな時、子供の頃に自分を捨てた父親の孤独死の知らせが入り、遺骨を引き取ることになる。
このアパートの住人は皆、社会からは少しはみ出した訳あり人たちばかりで、そして貧乏だ。
未亡人の大家の南さんは何かを抱えているようだし、墓石売りの溝口さんは息子を連れて訪問販売しているし、静かにと暮らしたいと思っていた山田だったが、何故か住人たちと関わりを持つようになっている。
友達でも家族でもない関係だが、山田は孤独ではなくなり、新しい「繋がり」を築いていく。
コロナ禍で益々格差が生まれて分断され、無縁社会が広がっていく中、この作品は、そういう風潮に静かに抗うように新しい「繋がり」を我々に提示しているような気がする。
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