「でんでんむしのかなしみ」川っぺりムコリッタ 大吉さんの映画レビュー(感想・評価)
でんでんむしのかなしみ
予告から、孤独な若者とおかしな隣人たちとのふれあいを描いたコメディ、くらいに思っていたら、意外にも奥が深かった。
誰しもが哀しみを背負って生きている。
他者とのつながり、自らの過去とのつながり、死者とのつながり、いのちのつながり。いろんなつながりを感じる(考えさせられるよりも感じる)作品だった。
松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆、柄本祐、緒方直人、みんなそれぞれがこの人じゃなければ考えられないという役を上手く演じていた。
他者との関わりを避けて暮らしている山田君。迷惑ながらも人とふれあうことでだんだんと表情がいきいきとしてくる。松山ケンイチがただご飯を食べているだけなのに飽きることなくいつまでも見ていられる。
満島ひかりの亡き夫の遺骨とのラブ・シーンは哀しくせつなくも美しい。満島ひかりだから生々しくならず美しく哀しい。
風呂を貸してくれと勝手に上がり込んでくる隣人。ムロツヨシでなかったら、すごい嫌な奴になってたろう。ムロツヨシだからなんか憎めない。
薬師丸ひろ子、どこに出てたんだろうと思ったら、声だけだった。確かにいい声だった。あの声で優しく語られたら死ぬのを思いとどまるだろう。
吉岡秀隆演じる墓石のセールスマンも、あの声で空に浮かぶ金魚の霊の話を聞いたんだな。だから生きているんだ。(どですかでんの三谷昇のまんまのシーンも良かった)
蝉の声、キュウリを齧る音、炊き立ての白米、生きていれば何にだってしあわせを感じることができる。
ラストの葬送行進は現実離れしていたけど、この映画にはぴったりの美しい(画も音楽も)シーンでした。
ありがとうございます。エンドロールで薬師丸ひろ子って出て、
えっ!どこに居たのって思ってました。いのちの電話の方だったんですね。(^。^)
ほんま最近の薬師丸さんは素晴らしいですよね。CMにも出ちゃったりして、お茶目な所も最高です!