劇場公開日 2022年3月4日

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「おじさんは父親目線で応援している」ポゼッサー ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5おじさんは父親目線で応援している

2024年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

寝られる

息子クローネンバーグを。と思ったら大して年齢変わらんかった。

人の体を乗っ取り殺人を敢行、乗っ取った体は自殺して処理して完全犯罪成立!という恐ろしい暗殺手法を使う殺しの組織?で乗っ取り役、つまり殺し屋として働く主人公のターシャ。冒頭はその殺しのテクニックを見せる…はずがどこかおかしい。ターゲットを殺してから自殺して終了のはずが、手元の拳銃の引き金を引くことができない。
駆けつけた警官と銃撃戦の末に死亡して無事乗っ取った体から意識を離脱させる。

その以来から心身ともに衰弱しつつあるターシャだったが、離れて暮らす家族と束の間の再会の後に次の大掛かりな依頼を受ける決心をする。
それは、大企業の社長とその娘の殺害の依頼、娘の恋人の体を乗っ取り近づくというものだった。

ブランドン・クローネンバーグ監督作品。なのでどうしても父との比較をされてしまうのはもう宿命としか言いようがないし、お互いSFホラー作品、独特の世界観という共通項があるように思う。
この作品もそこはかとなく父の臭いを感じさせつつもオリジナリティあふれるストーリー展開で、その体を乗っ取る瞬間のビジュアルなどはかなり凝っていて面白い。視覚的に、あー乗っ取ったんだなーとなんとなく納得させる画作りになっていてセンスを感じた。

その分、ストーリーがどこか説明不足でこちらの脳内にもチップ埋めて色々情報仕込んでよと思うような説明不足部分がチラホラ。後半に進むに従ってその綻びが大きくなっていった印象。
題材がメチャクチャ面白いし、映像化もしっかりできている分脚本の作り込みの甘さが感じられて少し残念だった。
後で解説見て、ああそのタイミングで意識を支配してるのはこっちやったんか、とちょっと驚いたりもしたぐらい。しかも恐ろしく静かなシーンが多くて珍しく一瞬寝落ちした。

正直映画単品としての評価はそれほど高くできない。あまりにも説明不足なのと、終盤のあるシーンがちょっと許せんかった。

でも、ブランドン監督にはこれからも是非頑張って欲しい。お父さんがザ・フライの監督をしたのが43歳の頃なのでちょうど今のブランドン監督ぐらい。まあお父さんはその時点でスキャナーズとかヴィデオドロームとか快作を出しまくっていた頃だけど、今は一本映画を作るにもどえらい費用が掛かるからそんなにポンポン出せんと思う。

それでも、お父さん同様完全オリジナル脚本でニッチ市場でしか受けなさそうなヘンタイ作品を作り続ける映画監督さんはハリウッドではレアな存在だと思う。
親の七光りと言われてもいいから、オリジナリティ溢れる独特のクローネンバーグワールドを作り続けて、このヒーローものとディズニーの続編しかないような映画業界にエログロワールドを守り続けて欲しいと期待している。

ハルクマール