「意欲的珍作」ポゼッサー タカシさんの映画レビュー(感想・評価)
意欲的珍作
肉体を乗っ取る殺し屋のアイデアは凄い斬新って訳でもないけど、ジャンル映画として志せば絶対面白いだろうなと思い鑑賞。
対象の肉体からの脱出方法は自らを殺すことらしい。一回目の乗っ取りから仕事人なのに脱出を躊躇して、メインストーリーの二回目でも躊躇する。仕事人として、ダメじゃないかと説教したくなるけれど、それぐらいを負担の掛かる仕事なのですかね。だったら、周りのケアが不十分としか言えない。物語として、起伏やトラブルを作るのは分かるけれど、オープニングで主人公がどのレベルの仕事人なのかを観客に示してから、メインストーリーのトラブルが面白くなるような。大体のスパイアクションってこのお約束を踏襲するように思うけれど、そこが上手くいっていない。そのため、観客としては「あんなに優秀な主人公が苦しめられているのか!」などと思えない。
一回目乗っ取りのターゲットが140キロぐらいの巨漢男性の為、出血量が凄い。実際の医療としてもおそらく、出血量は体重に比例するはず。
元夫と何があったんですかね。そこは具体的には描かれない。二回目の男の時にチラチラ見えた鏡合わせはなんだったんでしょう。私もネットニュースで不適切な画像などのアラートの判断は人力の肉眼によるものと聞いたことがあるので、その影響なんですかね。はっきりした因果などは描かないのは、トムヒの「ハイ・ライズ」を思い出したりもした。
主人公の凶暴化を描くけれど、暴力や残虐さが増長していくのは、自身の身体を誇るためのように現実を観ていると思うが、この監督はそう考えていないようだ。むしろ、他人の肉体に乗り移った不安感が凶暴にさせていると考えているようだ。ヤクザやチンピラの残虐さは自らの冷酷さを身内に知らしめる効果込みであると思うけれど、この作品の残虐さとプロ根性の食い合わせの悪さが気になる。