初仕事のレビュー・感想・評価
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ポートレート
『ポートレートとは肖像画や肖像写真の意味で、人物を主な被写体とした写真のことをいいます。一般的には、望遠レンズなどを使って背景をぼかして省略し、背景から人物を際立たせるような写真がポートレートとしてよく撮影されます。』
普段の日常とは違った視点で、しかしそれが普遍的な感情に落とし込む作品としてのアイデアは、邦画としての一ジャンルとして大変良質さを保持している作品である ヨーロッパ作品とも共有しているが、日本人独自の感性が冴え渡るカテゴリとして、今作も含めて未来永劫この方向制は間違っていないので続いていって欲しい
但し、今作の残念なところは兎に角台詞が聞き取れないというのが致命傷である 自分のような年寄りにも聞き取れるような速さを心掛けて欲しいと願うのは贅沢なのだろうか? 勿論、役柄に沿っての台詞回しなのは理解出来るし、カリカチュアされての人物像なのは当然なのだが、この手の作品は多分若い人よりも年齢が高い人の方が観賞するターゲットになり得るカテゴリなので、その齟齬をどうやって埋めるかのアイデアを誰か発明して欲しいものである
そんな愚痴は置いておいて・・・・
かなり価値観が異なる若い医者が、妻と子供に死に去られてしまい、子供の遺体を冷凍保存している中で、子供のポートレート撮影を依頼した元学友(医学部とは違う為、総合大学と予想されるが、そもそも学部が違えば校舎も別だと予想されるのだが、一部高偏差値大学はあり得るので、ある意味上司のカメラマンも変わった価値観の人なのでさもありなん 勿論、決して高学歴=変わった価値観という偏見を敢えて記述することを予め間違った価値観として前提とする)の部下にその仕事を振る事から始る、それでも初めての一人前の仕事に着手する若手カメラマンの話である
元々、非常識な依頼を受ける事から、しかしそれが今後の人生を占う謂わば"初舞台"の状況で、新人はここを乗り越えたいというチャレンジ精神、若しくは逃げられない壁というのは誰しも経験がある筈 というよりこれを避けてしまうと自分みたいにずーっと人生を逃げる生活に陥ってしまう究極の選択である 要はどっちも地獄と言うこと そんな追い詰められた主人公が、依頼者の素っ頓狂な態度にどんどん同調していく様を見事に演出していく 日常、一般論、倫理観、道徳、人が道標としていくその価値観が揺らぐのは、ほんの一瞬の落とし穴だということをこのストーリーは他の作品以上に表現している希有な作品であるのだ 人は本当に弱い 全ての条件が揃えばあっという間に価値観は変換する 興味深いのは影響を及ぼす人間も又、信じていたモノをアッサリと捨て去る現実が眼の前に現われたとき、意趣返しは極めて容易なのである それが崇高だと信じる程、崩れるのは容易い 勿論偶発性が伴うという謂わば神の領域かも知れないが、そんな見えざる手が施されても尚、今迄の信念が揺らぐことがないという人物はいるのだろうか? そして警察が来ることがそのフワフワした価値観を一丁両断にする現実味 そんな宗教観、倫理観、哲学さえ感じさせる本作に手放しで称賛を送りたい 惜しむらくは、台詞が・・・(泣
兎に角、子供が可愛い 近年稀にみる"赤ちゃん可愛い作品"としも突出している作品である
TIFF2020にて鑑賞。 フライヤー情報を読んで「これって死体遺...
TIFF2020にて鑑賞。
フライヤー情報を読んで「これって死体遺棄にならないんだろうか!?」と思いました。この内容で映画が成立するんだなぁと驚きでした。とある雑誌に掲載されていたエピソードを小山監督が読んで、それを題材に、5年前に制作した作品だそうです。
変な題材を挙げたもんだと思ったが、蓋を開けてみると、真摯な制作だったし、むしろ、こういう感情ってあるかもなぁ…という共感を感じさせられました。
定点撮影とか小津アングルっぽい演出とか、自然の音が入ってたり、人の声の聞こえ方とか特徴的な面白い表現もたくさんありました。
若いってことは、何にでも真剣になれるので良いです。
初仕事を任された若いカメラマンが、自分のキャリア形成も兼ねて撮影を始めて見ると、サービス精神も手伝って段々とプロ意識が目覚めて深みにハマって、周りが見えなくなってしまう様子も面白かったし、遺体の写真を撮るという異端な行為への違和感や背徳感といった気持ちと、でもなんとなく共有していってあげたいという不思議な感情が、登場人物達を通して行ったり来たり混在していくところが面白かったでした。
最後にまともな大人が出てきて、
「バカじゃないか?考えたら分かるだろう!?」
って怒られるシーンも締めとしては面白かったなぁ。
「よく考えたら、そうですよね…」
って、もう苦笑いしかない。
まともな神経を持ってる人であろうとも、一線を越えちゃう時だってあるし、判ってても、あえてそうしたくなる時だってある。
最初は特異なモノを見せられている印象から、観ているうちに、段々と理解出来るようになると、同情心が湧いてくる。
西洋ではデスマスクを取っていた事実だってあるし、上映後のQAでは、精神論の話も出て、近親者の葬式で撮影したことがあるという人も数人居た。確固たる信念というよりは、無意識に寄り添いたいという感情に近いんだと思う。
題材が暗いので、なかなか人には勧めにくいけど、斬新な良いものを貰えた気がしました。
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