林檎とポラロイドのレビュー・感想・評価
全22件中、21~22件目を表示
大半の鑑賞者は見たことを後悔する映画だと私は思う。
高評価も多いが、私は鑑賞して観たことを後悔した。もう、二度と観ないだろう。テレビ放映で無料なら見るかも。聞き慣れない言語だと思ったが、ギリシャ語だった。
描かれるのは、孤独な中年男の身辺雑記である。突然、記憶喪失になる奇病が蔓延する。主人公にこの病気が発病し、病院で治療することになる。記憶を取り戻すことは困難で、人生を再教育するプログラムが始まる。
記憶喪失になれば、通常ならば自分が何者なのか必死に探し求めるだろう。ところがこの主人公、淡々と再教育プログラムをこなすだけである。感情をあらわにしない。昔、住んでいたアパートで飼われていた犬に偶然、街中で出会いその名を呼ぶのだ。全ての記憶を喪失したわけではないようだ。けれど、犬の飼い主を辿れば、自分の身元が判明するのにその場から逃げるのである。
同病の女性から好意を持たれて、誘われているのに応じようしない。どうやら、主人公は過去の出来事を受け入れることが出来ず、現実から逃避しているようだ。最後におそらく妻の墓を訪れたことから、妻の死を受け止められず、現実逃避する現代人の孤独な魂を描いた映画だとわかる。感情を喪失したのもそれが原因だろう。
オーブンリールのテープレコーダやカセットテープレコーダーが使われている。1970年代までは利用されていた。当時のギリシャは軍事独裁政権だっと思う。閉塞感から奇病が流行ったかもしれない。
とにかく、友人には勧めない映画だ。
結局あのプログラムは間違ったものではなかったということか。
おそらく(奥さんか恋人かわからないが)同居していた大切な人が亡くなり、その悲しみに耐えきれず、記憶喪失者用の治療である「新しい自分プログラム」なら記憶を消せないまでも上書きならできると考え、記憶喪失者のフリをしプログラムを体験することを思いつく。
だが与えられた課題でも人の死に触れることとなり、自ら途中でプログラムを中断し、元の生活へ戻るといったお話。
一見すると難しそうな映画だが、少し時間を置けば誰も皆同じような考えに行き着くという逆にわかりやすい話だと思う。
チラシの説明では、ある日バスの中で記憶を無くした・・・とあったような気がしたが、実際映画ではまだ記憶があった状態から始まるので、鑑賞後にその場面を振り返ってみても頭をぶつけたりなどうっすらとしたヒントのようなものが見て取れるが、林檎は物忘れを防ぐと聞いてオレンジを買ったり、女性と関係を持たなくてはならない課題を避けたことなどからも、本当は忘れたい過去があり、特定の女性への思いのようなものがまだ残っており、実際は記憶がしっかりとあるということがわかる。
自宅に戻り部屋に日差しを取り込み、改めて記憶に良いと言われる林檎を食べるシーンにはグッと来た。
生きている限り別れ(死別)というものは避けて通れないことを改めて知り、悲しい過去も全て受け止める覚悟を決めたことで、ほんの少しだけ前を向いて生きていこうとする意思が伝わったからだ。
そういった意味ではこの主人公にとって「新しい自分プログラム」を実践したことはよかったのだと思う。
多くを語らずに映像で思考に訴える大人の映画だと思う。
全22件中、21~22件目を表示