劇場公開日 2021年6月4日

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「政治の話ではなく「人たち」の話」トゥルーノース うむぼんずさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0政治の話ではなく「人たち」の話

2021年6月19日
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すごい映画。
「北朝鮮版ビューティフルマインド」と言うべきか、人生の意味と苦境(というか地獄)でも正しい行為を行う本当の重要性を否応なく考える。人間の尊厳とは何か。童謡の「赤とんぼ」で感動したのは初めてだな…。

政治がどうしてもチラつくが、実際観てみると政治色はそこまで感じず。めちゃくちゃ心揺さぶられる映画で、目を背けたくなる場面も多々あったが、(クォリティが高いわけではない)アニメだから最後まで鑑賞できたように思う。実写だとしたら、心抉られてしばらく立ち直れなさそう。あと普通に映画としてのストーリーもあって、あっという間に時間が過ぎる。

タイトルが示す通り「真実の北朝鮮」がドキュメンタリー風で描かれていて、強制収容所に入れられるまでの描写も恐ろしいし、何より収容所の様子が凄まじい。
単に、北朝鮮でこんなことが起こってますと伝えるだけでなく、北朝鮮の一般人民が考えていることや民族の絆(国家主席以前に大事だったもの)を紡ぎ出していて、すごくエネルギーがある。物語の中でヨハン中心に歌う歌詞がアンチテーゼのようで、本来理想とすべき絆や助け合いがそこにはある。『我ら人民(I am a man)』、人民とは…。

だから大勢について、また政治についての描写はほとんどなくて、「いかに正しく生きるか」にフォーカスされているし、「正しく生きている」人たちがいることに目を向けていく。絶対今の自分が収容されたら2ヶ月も保たないだろうな…。

もちろん政治批判的な意味合いも多分に含んでいるだろうが、現実に起きていることであるし、そこから何を感じてどう行動するかが問われている気がする。多くの人に、映画館で観てほしいなと思う映画だった(観る人は選ぶだろうが)

「誰が正しいか、間違っているかじゃない。誰になりたいかが大事」

うむぼんず