「最低限のテクスチャとポリゴンが伝える現実」トゥルーノース よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
最低限のテクスチャとポリゴンが伝える現実
人は一定程度の辛い現実を見せられた時には涙を誘われるものだけど、限度を超えると泣くことすら忘れてしまう。
北朝鮮の現実について、わたしたちは漏れ伝わる一部しか知らないし、果たしてそれが真実なのかを当事者の証言だけで判断するのは難しい。けれどもこの映画は、憐憫の涙すら観客に許さないくらいの過酷な現実を突きつけてくる。
敢えて採用したと思われる、最低限のテクスチャとポリゴンで構成された3Dアニメーションの抑えた感情表現が、かえってものがたる体験に真実味を増している。生ぬるい現実を生きているわたしには想像も及ばない。けれどそんな中奏でられた「赤とんぼ」には揺り動かされた。
わたしには、おそらく眺めていることしかできない。こんな過酷な現実が本当にあるのなら、どうか人が人らしく生きられる時代が早く訪れるよう、祈ることしかできない。
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CBさんのコメント
2021年6月26日
> …ポリゴンで構成された3Dアニメーションの抑えた感情表現が、かえってものがたる体験に真実味を増している
ホントですよね。あえてやってること知って観ると、余計に迫って来ました。