「ヒーロー映画のふりをした人間映画」エターナルズ andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒーロー映画のふりをした人間映画
MCUフェーズ4の一作なのだが、そもそも私フェーズ4は一作も観てないしフェーズ3だって肝心のアベンジャーズ観てないという…。
まあそうだとしても、「エターナルズ」は(大量に過去ネタと先への伏線が仕込んであるものの)単体で観ても面白い…というか心動かされる映画だった。
もう散々言及されているが、「エターナルズ」の明らかな多様性。まず監督がクロエ・ジャオ。
マ・ドンソクとクメイル・ナンジアニとバリー・コーガンが仲間だなんて(皆個人的に推し)。ブライアン・タイリー・ヘンリーが演じるファストスはゲイとして描かれ、聴覚障害を持つローレン・リドロフも参加。時代の流れの写し鏡のようだ。
多様性はある意味では個々の心の持ちようの差異でもあるわけだから、エターナルズのメンバーは、長い時間を共に過ごしてもやはり姿勢に差が出て意見が合わなくなる。そういう意味でこの物語の敵は(大きなのもいるけど)エターナルズ自身というか…。
設定も人間関係の描き方も極めてベタなのだが、途中で涙が止まらず。セナとギルガメッシュの関係性とか、キンゴと付き人の関係性とか、あとは人間に絶望したファストスが見つけたささやかな家族の絆とか。物語の中心線じゃないところに琴線に触れるものを感じた。
アンジェリーナ・ジョリーの面倒を見ているマブリーは完全にマブリーでしたね…エプロンつけてパイ焼いて、いざ闘うときは拳で吹っ飛ばす!
物語は単純といえば単純な設定で、スケールは大きいのだが、エターナルズの人間関係は複雑で閉じているというか。それぞれにある忠誠や親和や嫉妬、疑念。
そして敵と思っていた存在との関係性。エターナルズは全員が最強なわけでもなく、皆が同じ考えを持つわけでもなく、「私には無理」「僕には無理」とか言ってしまう。ヒーロー性が強くない集団というか。熱さがないというか。
そういう意味ではヒーロー映画という外面を持った人間関係映画という方が正しそうと感じた。
エターナルズ全員の葛藤に時間をかけ過ぎるのも難しかったのだろうけど、リチャード・マッデンはあの役柄だったらもっと描き込みできそうだし、一匹狼的なバリー・コーガンの葛藤がもっと欲しかった。彼は彼でイメージに嵌り切った役柄というのもあって、逆に破壊が欲しかった。
映画としてときどき本当にハッとするカット、美しい構図がたくさんあったのは嬉しかったです。
MCUお得意のエンドロール中とエンドロール後の映像だけでは全然展開が分かりませんが、「エターナルズは帰ってくる」のですから次回も楽しみです。