「今までのMCU映画と同じく突っ込み所は沢山あるがメインのプロットがなかなかクレバー。「騙しの天才」クリスティっぽいプロットが他の欠点をカバーしてくれた。」エターナルズ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
今までのMCU映画と同じく突っ込み所は沢山あるがメインのプロットがなかなかクレバー。「騙しの天才」クリスティっぽいプロットが他の欠点をカバーしてくれた。
①何か段々話を接ぎ木していってワケわからんようになっていった以前のMCU映画に比べて最初から世界観を決めているのは気に入った。(然し、この映画の世界観で行くとアベンジャーズでは結局地球の破滅は止められなかっただろう訳だし、何のために地球を守ってきたのかという素朴な疑問に行き着いてしまう…)。単純に善悪が決められない世界観も大人っぽい。②『人類を(ディヴィアンズによる)絶滅から守るために(しかし人類の発展に介入してはならない)』7000年前に地球に派遣されたというエターナルズのミッションが実は大嘘で、「人類が一定の人口に達したら遥か昔に地球に植えた生命体が人類のエネルギーを吸収して出現し地球を破壊して新たな銀河系を造る」為に人類がその時まで滅亡しないようにしておくのが本当のミッションだった、というお話。観客を初めからミスリードする(騙す)プロットはクリスティの代表的な諸作を思い起こさせる。③寿命がつきた星系・銀河系が爆発して新しい星系・銀河系が誕生するという営みは宇宙の真の姿として今や常識なので、それにリンクした世界観(まあ、ここでは宇宙観というべきか)であることを考えると、セレスティアスのやろうとしていることは彼らからすれば正義であり善ではあるのだが、滅ぼされる側の人類からすれば勿論悪である。スーパーヒーローものは最終的には人類の味方でないといけないので最後はセルシ側が勝つのは予定調和的だが、なかなかに葛藤はすんなりと解決できない展開はリアルでもある。④その容姿といい最も強力なパワーを持つ今までのヒーローものなら確実にヒーローになる筈のイカリスが実はラスボス(セレスティアスが悪とすればだが、一概に悪と言えないところが難しい)だったというのも賢い作劇。それでも彼がセシルを止められなかったのはセシルへの愛だったし、セシルが本来のミッションに背いたのは人類への愛であった。結局何でも「愛」が全てを優先してしまうのはこういう映画では約束事とは言えもう少し工夫は欲しいところ。⑤ただ、セレスティアスの立場から見ればイカルスはあくまで使命に忠実であっただけだし(少々やり口は乱暴過ぎたとは言え)、セルシたちは逆に裏切り者になるわけで、なかなかこっちは悪、あっちは善という単純な割りきり方が出来ない重層的な話の構造は面白いと思うのだが、そこまで考えてくるとセレスティアスは何故エナーナルズたちを人間的な感情を付加して作っのか(最初から使命を理解していてただ使命の遂行に忠実な者たちを造ればこと地球に関してはプロジェクトが頓挫することはなかったのに)、やはりこの辺りにMCUの話の作り方の緩さは残っていると思う。⑥ここで視点を変えてみると、サノスがやった指パッチンも宇宙の環境を守るためにした事とすれば、環境問題的には決して間違った考え方ではないと『インフィニティー・ウォー』を観たときに思ったものだが(勿論消される側からすればトンでもない話ではあるが)、そんなことをすればセレスティアスのプロジェクト(宇宙の再生)を後退させるわけで、なぜセレスティアスはあの時何もしなかったんでしょう。その謎がこれから解明されるのか、それとも(これまでのMCU映画がそうであったように)適当にうっちゃられるのか次作がその点では楽しみ(かな?)。ただ、これまでのMCUの世界観とこの映画の世界観とをどう結びつけるのかを考えると、またワケのわからん話のひねくり方になってしまう恐れはあるが…⑦クロエ・ジャオ監督は2時間半の長尺を感じさせない演出力はあるし、登場人物たちの心理描写にも冴えを見せるが、やはり『ノマドランド』のような社会派ドラマを作っている方が良いだろう。しかし、彼女が監督をしたら『エターナルズ』も中国では上映出来なくなるだろうにディズニーはもう世界最大の映画マーケットである中国は見限ったのかしら。⑧これまでのMCU映画が白人オンリーだったのにくらべ(ブラックパンサーという例はあったけれど、あれは白いハリウッド対策みたいなあざとさを感じたし映画もそれで実際以上に高く評価されたきらいあり)、ヒロインはアジア系だしエナーナルズの一人はGBLTQ+のキャラクターだし聴覚障害のメンバーはいるしで多様性の世界を表現するような多彩なキャストは良いのだか、セレスティアスが(人種は別として)そんなエターナルスを造る?ということに考えが及ぶと、話の整合性よりも世間に迎合するあざとさをそれとなく感じてしまう。⑨演技陣の中では、使命の達成の為には仲間もを犠牲にする非情さを持ちながらもセシルへの愛情との間に板挟みになる相剋と後半まで仲間の前で偽りの演技を表現しなければならないリチャード・マッデン扮するイカリス役が最も難しい役だろうか。大スターであり今では大女優と言ってもよいアンジェリーナ・ジョリーがMCU映画に出るのは今更という気もするが、生き残ったエターナルズのメンバーがスターのオーラに欠ける面々なので、次回以降は彼女がもっとメインになるのかな?⑩どうも誤解されているようだがエターナルズたいは純粋に言えばスーパーヒーローではない。宇宙の再生を司る創造主の為に“その時”まで人類を守って来ただけ。その中で“人類の何処が良かったのか”人類を滅亡から救った者達がたまたま(人類側から見れば)スーパーヒーローになっただけで、創造主側から見れば裏切り者でしかないんだけど(折角なら裏切った時に自爆するような仕掛けを仕込んどけば良かっのに…その辺りがMCUらしい緩さか…)