「「ノマドランド」×「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)の結果は、おそらく様々な感想がある。」エターナルズ 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
「ノマドランド」×「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)の結果は、おそらく様々な感想がある。
本作は上映時間は2時間36分となっていて、10年間の集大成であった「アベンジャーズ エンドゲーム」の3時間1分よりは短いものの、初めての作品としては割と長めとなっています。
でも、本作でメガホンをとった「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督は「短すぎる」と言います。
それもそのはず7000年以上という期間を描く必要があり、「エターナルズ」の10人のメンバー、アクションシーン、人間模様など様々なものを描かないといけないからです。
しかもクロエ・ジャオ監督にとっては初のアクション映画で、いきなりの大役。
マーベルのトップが多様性を求めたチャレンジングな本作。これまでのサポート体制が充実していたこともありアクションシーンもキチンとしていて、まずは及第点ではないでしょうか。
ここからは、個別に焦点を当て感想を書いてみます。
まず、「ノマドランド」のような自然光のもとロケ撮影された映像の数々は、映像にリアリティーを与えている点で成功と言えるでしょう。
MCU映画で初のラブシーンも監督らしさでしょう。
ただ、それらはあくまで一部であって、全体としては、ややアクションシーンが少な目のMCU映画という結果になっているように感じました。
また、本作は、初登場の10人を使って、いきなり「アベンジャーズ エンドゲーム」のような壮大な作品を描き切らないといけないため、脚本が詰め込み過ぎている状態になっている点があります。
それもあってか、予備知識のない10人の人間模様や背景などを描くのは困難だった印象です。時間の行き来が多用されている点も、必ずしも効果的ではなく、まとまりがない印象を与えているように感じました。
これまでのMCU映画は、「アベンジャーズ エンドゲーム」という10年間の集大成を描いた作品があり、そこでは最後のボスキャラとして「サノス」という全宇宙で最大の脅威がいたのは非常に効果的だったと思います。
ただ、本作では、それを1作で飛び越えようと、“宇宙最凶最悪の敵・サノスをも超える敵”とされる「ディヴィアンツ」という設定は、野心的だとは思いますが、映像の面では、割とパッパッと倒されていく雑魚キャラのように見えた点は、やや違和感を持ちました。
しかも「エターナルズ」のメンバーから「アベンジャーズ」を優に超えるような強さが見えにくかったことも、よりそれを感じさせました。
これは、本来MCU映画の醍醐味であるアクションシーンが最高潮に機能しないといけないところであって、その革新的な映像を生み出すまでは出来ていなく、あくまで通常のアクション映画になっていた点は、野心的な作品であるがゆえに残念と感じた部分でした。
本作は、あくまでこれからMCU映画が新たな方向性を模索する中で生まれた実験的な作品であり、この化学反応も踏まえて、より進化していくと思うので温かく見守りたいと思います。