「A7、D7、G7を知っていればバンドに入れる!」ザ・ビートルズ Get Back kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
A7、D7、G7を知っていればバンドに入れる!
3部構成で合計8時間にも及ぶ超大作ドキュメンタリーといってもいいのだろう。さすがピーター・ジャクソン監督。『ロード・オブ・ザ・リング』、『ホビット』の3部作と同じくらいの労力が必要だったのかもしれない。
3部構成となっているのも、一つ一つに意味があり、パート1ではだだっ広い特設トゥイッケナム・スタジオでの練習風景で3年間人前で演奏していなかったビートルズのメンバーが一発録りでアルバム制作、TV特番のために14曲の新曲を作り上げるというドキュメンタリー。この映像だけでも映画になると目論んだものだろう。2週間後にライブをやるとはいっても場所も決まっていなくて、新曲さえ完成していない・・・そんな中、8日目にはジョージが脱退???
ビートルズの曲作りの一面を長時間撮影にて残したものだけど、かなり適当な基礎となるコードと歌詞から徐々にまともな作品になっていくマジックを見せられた感じもするし、曲作りの合間に過去のオリジナルをふざけて演奏したり、他人の曲をも楽しんでいるのが普通のバンドと変わりないアットホームさが嬉しいところ。特にボブ・ディランの「I Shall Be Released」を歌うシーンには驚かされた。
まぁ、ルーフトップ・コンサートは実際に行われたのだから、ジョージの脱退騒ぎには驚かなかったけど、「代わりにエリック・クラプトンを入れよう」などと大胆な意見も飛び出していたのには驚いた。クラプトンが加入してたら歴史は変わっていたに違いない!
パート2では未だにライブ場所が決まっていないという笑い話のような展開。リビアにあるサブラタ遺跡でのコンサートというのもビートルマニアが夢想したくなるような設定だ。そして俳優のピーター・セラーズが登場したり、急遽ビリー・プレストンがキーボードで参加することが決まる。そんな中、「Get Back」の出だしである歌詞・Jojoのラストネームが決まらないとか・・・大丈夫なのか?そして、移民問題へのプロテストソングだったという事実。
パート3は予想通り、映画「レット・イット・ビー」の舞台となるルーフトップで落ち着くのだけど、中学生の頃映画館で観て感動した「Let It Be」が無かったのが残念。レット・イット・ビーではなくゲット・バックというタイトルというのもあるだろうけど、50年前にタイムスリップしたかのような錯覚に陥らせる効果もあったのだろう。ホワイトアルバムでバラバラになっていたメンバーが戻ってくる意味もあるし、いろんな意味が含まれている“get back”。個人的には、50年前のビートルズを懐古的に思い出そうと、ポール、リンゴ、オノヨーコ、オリビア・ハリスンの願いが込められている気がしています。
はっきり言って、ビートルズを知らない人が観ても面白くない映画だろうし、伝記モノの一つでしかないかもしれません。ただ、アナログなバンド活動を志す若きミュージシャンや音楽好きの方にはぜひ観てもらいたい作品です。