劇場公開日 2021年9月3日

「古今東西の映画へのリスペクトとMCU過去作へのマニアックなトリビュートに満ちたクンフー版『クレイジー・リッチ!』」シャン・チー テン・リングスの伝説 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0古今東西の映画へのリスペクトとMCU過去作へのマニアックなトリビュートに満ちたクンフー版『クレイジー・リッチ!』

2021年9月12日
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鑑賞方法:映画館

サンフランシスコにあるホテルの駐車係ショーンとケイティは高校時代からの親友同士。二人とも自分達の仕事と生活に満足しているが、学生時代のノリの延長で気ままに暮らす二人は同級生から心配される始末。いつものように深夜まで遊び倒した二人は翌朝出勤途上のバスの車内で不審な男達に因縁をつけられる。彼らの目当てはショーンが肌身離さず身につけているペンダント。突然目にも止まらぬ速さで男達に対峙するショーン。彼にはケイティにまだ打ち明けていない凄惨な過去があるのだった。

というツカミの部分は『ザ・ロック』ミーツ『スピード』。ショーンの部屋に貼ってあるのは『ゴッドファーザー』と『ウォリアーズ』と『カンフーハッスル』。ここだけ切り取っても解る通り古今東西の名作へのリスペクトに溢れています。MCU作品なので当然過去作への目配せも当然ありますがそのチョイスがマニアックで、『インクレディブル・ハルク』のアボミネーションが出てくるのにもビックリしましたが、“テン・リングス“という組織名が気になっていた人に対するサプライズに思わず大爆笑。まさかのアノ人が『キングスマン: ゴールデン・サークル』でのエルトン・ジョンくらい大活躍します。

悪党が雨垂れのように降ってくるマカオの高層ビルに架けられた竹足場上でのアクションは『ラッシュアワー2』、ショーンの母イン・リーの故郷の村ター・ローでの特訓シーンは『酔拳』とジャッキーリスペクトが漲っていますが、それもそのはずアクションコーディネーターのアンディ・チェンはジャッキーのスタントチームで活躍していた人。その他にもショーンの母イン・リーの演舞には『グリーン・デスティニー』の優雅さもあるし、ター・ローでケイティに弓の使い方を教える老人グアン・ボーを演じているのは『カンフーハッスル』で豚小屋砦の家主を演じていたユン・ワー。そもそもオークワフィナとミシェル・ヨーが出ていることからも解る通りこれでもかと中華テイストをブチまけたクンフー版『クレイジー・リッチ!』。監督のデスティン・ダニエル・クレットンにはアクション映画が撮れる印象がこれっぽっちもありませんでしたが、これを観る限りそういう映画を浴びるように観てきた人なんだろうなと勝手に想像してしまいますし、やりたい放題のクライマックスを観る限り『ドラゴンボール』好きであることも間違いないでしょう。

劇中でもチョイチョイ頭出しされていますが、お腹いっぱい出てくるMCUのお約束デザートをニヤニヤしながら観ているところにドーンと出てくるアノ名曲中の名曲でアラフィフ、アラカンは今まで観てきたものとは全く関係のない感情が突然揺さぶられて号泣してしまいますのでハンカチは必携。観終わった後にカラオケに行きたくなりますがそれはもうちょっとガマンしましょう。

よね