劇場公開日 2021年5月27日

「まず、この変わろうとしている世界の中で作られたディズニー実写映画の...」クルエラ 銀麦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5まず、この変わろうとしている世界の中で作られたディズニー実写映画の...

2021年6月13日
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楽しい

単純

幸せ

まず、この変わろうとしている世界の中で作られたディズニー実写映画の底力に感激した。

エンドに数百人の名前が流れていました。名前が載ってない関係者も沢山いるでしょう。そんな映画人が集結し、2021年に製作されたこの作品。
そして迅速な公開。

主演はWエマ。

エマ・トンプソンはものすごく魅惑的。パンキストのメイク、ファッション、美しい歩き方もキマっていた。

普段はクルエラを隠すためにエステラとして、昼休みに路地に座り込み、サンドイッチを頬ばりながらドレスのデッサンしてるシーンはやはり目を惹かれてしまう。

『ラ・ラ・ランド』の真面目な美人よりこちらのキャスティングの方が遙かに良い。
若さの煌めきは一瞬のものだと思う。若さが去ったあと、それがずっと続く女優、続かない女優がいる。

小さい時から支え合って生きてきた3人の『家族』。
随所で笑える小ネタ満載の2人組。長身の彼と、ポッチャリの彼。

所々コメディ入ってますね。

結構笑えるネタが沢山あって吹き出します。3人が何にでも変装するって、まるで『ルパン三世』みたいだなぁと思った。

101匹わんちゃんの、101匹目は実は死産にされそうになったクルエラ自身なんじゃないかと勝手に解釈してみたり。

クルエラの纏うドレスの数々。
後ろから見ると白無垢のようなガウンを羽織り、それがボッと炎で燃えると中は真っ赤なドレス。

ダストカーから現れた薄いピンクのドレス。最初はただのゴミにまみれて出てきたのかと思ったが、何と!
ドレスの裾がゴミではなくホンモノの長い生地だった。

素敵すぎる。

かと思えば、
ゲリラライブのようなステージ。
パープルのライトでビルに照らされるクルエラの文字。
まるで本物のファッションショー。歌、モデルのウォーキング。
ラストにまたクルエラが。目の周りに『Feature』と描いた白抜きアイメイク。

クルエラで登場する時のエマ・ストーンは正に次の若きカリスマ。バロネスと対等なほど堂々としている。頭もキレる。
女性としてカッコ良すぎるよ。

ことごとくバロネスをブチ壊す。
怪盗ルパンのように突然驚かし登場。捕まる前に姿を消す。

そして翌朝の新聞には、バロネスの記事より日に日にクルエラの記事がセンセーショナルに書きたてられ、皆がクルエラが次に何をしでかすか目が離せなくなる。

街の小さなブティックの店長の彼もすごく素敵。ボウイのジギー・スターダストっぽい。
彼のキャラクターの小粋さ。

小型のチワワに似てるワンコと、茶の老犬ワンコは本当にいじらしい。老犬ワンコが彼女の理解者でもあり、見守り役でもある。

火災の映像も素晴らしかった。炎がキラキラと輝いて観えた。

エンド前の楽曲の歌詞に痺れた。

美術、音楽、ファッション、ヘアメイク、キャスト、制作陣。どれも素晴らしかった。

個人的にはShaved headのマーク・ストロングが良かった。若い頃のデ・ニーロに似てる。

70年代は男女共に何てお洒落で一人ひとりの個性が光っていた時代だったのだろう。
そしてそれをこの映画は再現した。

この時代は『個性』が最も大事。今はファストファッションのような『同化』が無難。

しかし、何てパワフルな作品。この映画の世界観に入り込んでしまった。あっという間の140分でした。

『観ている』と言うよりは『体感』している感じに近いです。
ディズニーランドやシーで丸一日遊んだ帰り路、皆でああ!楽しかったね。と言い合うけど、翌日には不思議ともう余韻なんて残ってない。

この映画も同じ。
ラストの墓地のシーン、エステラを葬りクルエラとして生きていく。やはりこのシーン以外は余韻は殆ど残らない。

特にディズニーファンではないけれど、ウォルト・ディズニーが中途半端に夢を売ってるんじゃないと云うことが理解できました。

やはり米国は映画にかける予算が桁違い。そしてつくづくスケールが大きいなと感じた。

変わりゆく世界の中で、今、この2021年に映画を創り上げ、暗い世の中を、明るくかつスタイリッシュな作品に昇華し公開してくれたディズニーに。
そしてこの映画に関わったすべての人達に拍手を送りたい。

銀麦