パリの調香師 しあわせの香りを探してのレビュー・感想・評価
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優しい香り
この映画は、ほとんど男女二人しか出ず、偏屈なアンヌが、運転手として雇ったギョームに次第に心を開いていくのだが、二人は、フランス映画にそぐわず、恋人にはならない。
ベッタリしていない、ほんのり香りが漂っているぐらいの関係性って所が、香りをテーマにしているからなのかなと、勝手に邪推。でもそこが良い。
劇中、週一で娘と会うギョームが、今度の娘の誕生日は何をしようと、アンヌに相談した時、いつもはどうしてるの? 相手の望む通りにしてるのね。じゃ、今度は、あなたがしたい事を一緒にすればいいじゃないと助言。
そして、助言を受け入れ、ギョームと娘との海辺のシーンは二人がとても楽しそうだし、幸福そうで良いシーンだった。
このシーンは、今後のギョームのあり方の伏線になっていたような気がする。
鼻が利くと言う言葉は、わずかな兆候から
役に立つ事を見つけ出す能力だ、という。
正にその通り、アンヌは、最終的にギョームの潜在的な鼻の能力を見出し、アンヌは、再び調香師として羽ばたこうとしていた。
中年男女のある意味、再生の物語だと思った。
そして、映画だから、流石に香りは漂って来ないけれど、あたたかな優しい香りが漂ってくるような映画だった。
ギヨームの世界観がどんどん深まっていく
洋画の邦題は大抵センスが悪い。本作品の邦題はまさにその典型である。原題の「Les Parfums」(「香水」)に対して「パリの調香師 しあわせの香りを探して」は、いくらなんでもやり過ぎだ。そのまま「香水」でよかったではないか。本作品の登場人物は「しあわせの香り」など探していない。
嗅覚は健康を守るためになくてはならないものである。猫や犬を見ていると、初めて与える餌は必ず臭いを嗅ぐ。猫の場合はその前に前足で恐る恐る触る。餌かどうかよりも危険がないかをまず確かめるのだ。自分に危害が及ばないことをまず確かめて、それからその餌が食べられるものかどうかを臭いを嗅いで確かめる。人間は猫犬よりもはるかに嗅覚が劣るとはいえ、嫌な臭いのする物を食べたくないと感じるところは同じである。嗅覚は身を守るための原始的な感覚のひとつだと考えていいと思う。
多くの人は自分に自信がないのか、自分の感覚よりも他人からの情報を優先する人が多い。食べ物で言えば、まだ食べられるかどうかを自分で臭いを嗅いだり味見したりする前に、容器の消費期限や賞味期限を見る。食品の期限などは厚生省の役人がテキトーに決めた便宜的なものでしかないことを知らないのだろうか。信じるべきは自分の嗅覚であり、自分の味覚であり、自分の勘だ。自分が大丈夫だと思ったらその食品は食べられるのだ。期限などクソくらえなのである。
香水と言えば、銀座でランチを食べているときに、急に物凄い濃い匂いがして思わず振り返ったことがある。イケメン風の男性が数人、入店したところだった。匂いというよりも臭いという漢字が相応しく、クサイと言ってもいいかもしれない臭いだった。これでは食事ができない。仲良くしていた店員に「あれ何?」と聞くと、困った顔で「最近できたアパレルの店の方です」と教えてくれた。昨年末に瑛人という人が歌った歌に出てくる店だ。なるほど、こんなにドギツい臭いの香水もあるのだなと思った。
臭いと言えば、銀座のママたちにどんな匂いの男が好きかというアンケートを取った記事を見たことがある。結果は、銀座のママたちが一番好きなのは無臭の男だった。無臭の男とは、つまり若い男だ。新陳代謝が盛んで免疫力の強い若い男は雑菌を殺菌してしまうから、雑菌が増殖して発する臭いがしない。香水で誤魔化す男よりも健康な無臭の男を好む女性は銀座のママたちだけではないと思う。
なんだか香水について否定的な話になってしまったが、日本では香水は人口に膾炙していないということだ。日本の飲食店に香水をつけている店員はいないし、寿司屋では香水をつけた客は予約客であっても断られることがある。しかし日本人も肉食が多くなってきたから、今後は香水文化が広がるのかもしれない。
さて本作品は香水文化全盛のフランスが舞台である。調香師という職業が尊敬されるほど匂いに敏感、いや匂いにうるさいお国柄なのだ。主役は我儘で独善的な天才調香師のアンヌだが、本当の主役は運転手のギヨームである。ストーリーはこの二人の掛け合いで進んでいき、アンヌはギヨームに心を開いていくが、それは映画サイトに載っている話で、実際はギヨームの才能に気づいたアンヌがその才能をテコにして自分も再び輝きたいという熱意を燃やす話だ。そしてギヨームはそのおかげで人生を取り戻していく。
アンヌを演じたエマニュエル・ドゥボスは脇役でよく見かける女優で、演技は抜群に上手い。そしてそれ以上に上手だったのがギヨームを演じたグレゴリー・モンテルである。我儘なアンヌに腹を立てるが、やがてアンヌに悪意のないことと、単なる独善的なおばさんで、たまたま才能があったから高飛車になってしまったことに気づいて、それから後はやんちゃな子供の相手をするように、ときには呆れながら、ときには指導者のように、ときには励ますようにして接していく。その微妙な変化を見事に演じ分けていくところがいい。特に、この世界は匂いだけではない、五感をすべて使うべきなのだとアンナを諭す場面がとてもよかった。
人は才能のある人に接すると成長するものなのかもしれない。料理を作るためにはとびきり美味しい料理を数多く食べる必要があるし、絵の才能を伸ばすためにはいい絵をたくさん見なければならないし、いい小説を書くためには本を山のように読まなければならない。
人生をよりよく生きるためには優れた人と話をするのがいい。一芸に秀でた人の話には、必ず人生の真実がある。その人の人格はどうあれ、ひとつのことを深く追及するには、それなりの深い世界観が必要なのだ。人間を知らずに香水は作れないのである。アンヌと接することでギヨームの世界観がどんどん深まっていくのが手にとるようにわかる。そこが観ていて気持ちがよかった。
出会いが人を変える
調香師のアンヌは、ホントイヤな女だね。
高慢な感じが全開なんだけど、人を見る目はあるんだな。
どうして、ギヨームを再指名したんだろ?
ストレートに自分にぶつかってくれたからなのか、彼の真面目なところを見抜いたのか。
この二人が、どこかで恋に落ちてハッピーエンドになるんだろうなって、そう思いながら見ていたのに、そうならなかったところが、とても好感が持てました。
人生のこと、キャリアのことに焦点を定めてブレなかったところ。
人って、仕事に助けられる。
家族とうまくいかなくても、友達がいなくても、好きな仕事に出会えたら、今ある仕事を好きだと思えたら、何とか前を向いていけるのかな。
わたし的にはアロマ派だけど、ケミカルな匂いでも、香りって人をハッピーにする力があるんですよ。
イランイラン、ベルガモット、ペッパー、香りの元となる言葉だけで、何だかいい香りがしてきそうな、芳醇な映画でした。
『ドライビング Miss デイジー』ミーツ『トランスポーター』?何気ない仕草で物語を誘なう繊細で軽快な再生の物語
離婚した元妻と娘の親権を巡って争っている臨時雇いの運転手ギヨームが元締めのアルセーヌから請け負ったのはアンヌという女性の送迎ドライバーの仕事。傍若無人に振る舞うアンヌにうんざりしたギヨームは一日でギブアップしたが、何故かアンヌは再度ギヨームをドライバーに指名。娘の親権のために仕事を選んでいる場合ではないギヨームは嫌々ながらアンヌとの仕事を請けたギヨームはアンヌがかつての天才調香師で、一時的な嗅覚障害が引き金となって業界から干されてしまい今は高級カバンの消臭やレプリカ洞窟に匂いをつけたりといった地味な仕事に甘んじていることを知る。
何となく『ドライビング Miss デイジー』や『グリーンブック』に似た感じのプロットですが、映像でも音声でも表現することの出来ない香りが物語の軸となっている点がユニーク。
ギヨームが吸っていたタバコの銘柄だけでなく使われている葉の原産地までも言い当ててしまうほどの鋭い嗅覚を持つ天才アンヌの孤独と、不安定な職業ゆえに娘と暮らすことが出来ないギヨームの焦燥がぶつかり合う中で二人の人生が新たな軌道に乗るまでを皮肉とユーモアたっぷりに描いた温かいドラマ。ナラティブな台詞ではなく何気ない仕草で物語を誘導する展開とちょっとした端役にもきっちり見せ場を持たせる丁寧な演出は監督が脚本も兼ねているからこそ出来る繊細なもの。いかにもフレンチな洒落た終幕もエレガント、地味ながら胸がすっとする爽やかな作品でした。
プロフェッショナルの格好良さ!
アンヌは狭い業界で成功していたからか人間性に魅力がなかった、映画の初めは。
でもギヨームが、アンヌに真剣に向き合い忠告し、アンヌも学んでゆく。
社会性なくとも専門職一本で来られたのは、やはり素晴らしく仕事が出来るからなんだろう。
アンヌは頑固だけど、それは自分を守って仕事してゆく姿勢でもあるんだね。
そして誇り高いアンヌにほかの仕事は出来ないだろう…。酒など飲まず自分をコントロールして、鼻を鈍らせないで!
調香師はとてもシビアな仕事でストレスも伺い知れないな…と感じた。
でもアンヌはギヨームという心強いパートナーを得た。二人の人生はこれから深まってゆきそうだね!
普通…
一流有名ブランドが協力、的な謳い文句の予告だったけど、まあ、そんなんほとんど関係なし。展開が淡々としすぎていて調香師の味覚障害や失業して引っ越しできなくなる父親の苦悩があんまり伝わってこない。ちょっと物足りなし。
20代~の女性におすすめ、かな?
今年11本目(合計78本目)。
こちら、やっている映画館が大阪市内では1か所しかなく、わざわざそのためにお出かけ。
内容はタイトル通り、調香師を扱うもの。その性質上、ややマニアックな専門用語(私もよくわからなかった…字幕の説明不足もあるけど、まぁ、こういう映画だから見る人がみたらわかるのでしょうね)が出る一方、フランス映画であり、人と人とのコミュニケーション・葛藤を描くドラマで、いわゆる「べったり恋愛ドラマ」にしていない点は、はっきり高評価かと思います(これ「ばかり」90分も見ても正直つまらないので…)。
むしろ、このようなある意味、日本ではもっとマニアックな職業にスポットを当てた映画が公開されたこと「それ自体」に意義が大きいかなと思います。フランス映画自体は数は少ないとはいえ存在し、それは大手(tohoさんなど)でもやっていることは多いですが、ちょっとでもマイナー分野になると採算が取れないのか大手は扱わず、いわゆる小型映画館が扱うことが多いのですが、それはまぁ、映画館の側にも「採算」という観点があるので仕方がないだろうと思います。
大阪市では年に1~2回、フランス映画祭などが開かれますが(2020年はあのご時世なのでどちらも中止になってる)、ただ、配信されれば大阪市のような大きな都市ではどこかでは見る機会があるので、まぁその点では機会損失にはなっていないかと思います。
多くの方が書かれていたように、男性が見ても楽しめる内容ですが、むしろ20代~の女性層がターゲットかな(あるいは、(日本ではおそらくもっと少ないと思いますが)この職業を目指そうと考えている10代の子向けかな)とは思いました。
ただ、別にターゲット層を最初から限定していないし、これだけ情報が公開されているので少しターゲット層が外れていても、それを承知の上で見に行く分には何の問題もないかと思います(映画としても普通ですし、過激な表現なども出てこないので)。
減点要素はなしで5.0としました。「専門用語が少し多めに出てくる」という点は減点要素になりうるものの、映画の性質上仕方がないですし、私以上に香水などの知識をお持ちの方のほうが(どう考えても)多いかなと思いますので、そこは減点要素としていません。
また、「恋愛映画らしく、最後には(これから、どうするのかを)はっきりさせるべき」という点も、「多少の恋愛要素はあることはあるが、その点をあえて度外視してこうした職業にスポットを当てて、この点はあえて軽く扱って視聴者に任せた」というのであれば、それはそれであり(他に扱う内容がないのに、それ「さえ」ないとさすがに減点対象)、それも減点対象外としました。
※ なお、エンディングロールの中に出てくるはずの「無断コピーはダメよ」というたぐいの内容も全部フランス語ですが(その部分は翻訳されていない)、翻訳されていなくても常識的にダメなものはダメなのであり、ここの未翻訳も度外視しました(逆に、「書かないと絶対にわからない注意事項」なら翻訳しないと減点対象ですが、そう思える内容は存在しない)。
大人向けのフランス映画
フランス映画らしい落ち着いた大人向けの人間ドラマです。
調香師という仕事の一部が見れたのも興味深かったです。
娘と暮らしたい粗野な運転手と過去のトラウマを引きずる調香師とのやり取りが
とても面白かったです。
男女の恋愛物にしなかったのも安心感がありました。
ラストのエピソードも笑えます。
中高年の方にお勧めします。
プロフェッショナル
元嫁と暮らす10歳の娘を自宅に呼ぶ為に、仕事を選べないハイヤー運転手が、人付き合いの苦手な調香師と出会い巻き起こる話。
引っ越さなければ娘と暮らせないと言われる中で、運転免許の残りも僅かというギリギリな状態の主人公が、頼み込んで貰った仕事は、曰く付きの調香師の運転手という展開。
だらしなく不誠実なところがみられるけれど、客に対しては正直さと不器用さも見える主人公と、自分勝手ではあるけれど、世間や常識を知らないだけなのか?という様にみえる調香師のやり取りは、噛み合っている様なずれている様な…。
出て来る人はみんな良い人で、捻りという程のものはなかったけれど、本音で向き合い互いに変化を与えあう人間ドラマで、最初から最後までベタさがとても良かった。
【コカ・コーラの香り】
コカ・コーラの香りのくだりで、娘の顔が映し出されて、なんか、ちょっと泣けてきた。
この映画で泣ける僕はちょっと変なのだろうか。
この「パリの調香師」は、思いがけずとても素敵な映画に出会った気がする。
再生であり、チャレンジであり、香水に限らず様々な香りを合わせて新たな香りを作り出していくところは、僕達の世界に足りない調和を生み出す作業のようでもあり、上手い表現が見当たらないが、とても和らいだ良い気分になる。
アンヌと、ギョームの感情表現も対照的で、それが少しずつ絡まり合って、調和していく様も、実は調香のようでもある。
人は、異性が、自分より遠い遺伝子を持っていれば、その異性の香りを良い匂いと感じるセンサーを先天的に持っているのだそうだ。
そう、体臭をだ。
強い遺伝子の子孫を残すための能力なのだそうだ。
不思議だ。
それに匂いを感じられなくなると、味覚も感じられなくなったり、嗅覚はとても大切な感覚器官だ。
嗅覚が衰えると認知症になりやすいという話を聞いたこともある。
香りをリセットするとは、自分の体臭を嗅ぐことだったり。
これからは、もっといろいろ香りに、匂いに気をつけて過ごしてみようと思う。
ちなみに、香道の体験コースを受講したことがあるが、あれはお高いし、難しすぎました。
顔で語る芝居に拍手
鼻の効かなくなった調香師と、うだつの上がらない運転手コンビの復活劇。
コミュニケーション能力が著しく欠落しているアンヌは、悪気はないのに周りを不快な気持ちにさせてしまうタイプ。
序盤のいつも不機嫌そうだった表情が、ギョームとの交流を通して徐々に柔和になり、最後には可愛らしく見えてくるのだから不思議…笑
台詞は相変わらず尊大なんだけど、表情だけでここまで人の印象って変わるものなんだなぁ。
それだけ、アンヌ役のエマニュエル・ドゥボスが素晴らしかったってことだね。
正しい人間関係構築の先に
主人公の女性アンヌは才能に溢れた有名調香師。
数年前までは有名ブランドの香水を作っておりその道のトップを走っていたが、ストレスから嗅覚を失う。
今は回復するも昔の様な仕事には戻れず過去の実績を考慮され生活用品、日常品の香りに関わる商品の開発に携わる仕事を担う。
一方主人公の男性のギヨームは仕事を転々とし半ばフリーターの様な状態。娘の親権も奪われ自暴自棄になっている。そんな中新しくはじめたドライバーの仕事でアンヌのドライバーとなり彼女と互いにぶつかり合いながらも共に力を合わせて生きていく事となるヒューマンドラマである。
僕自身も有名ブランドの香水を愛用しており香水以外でも「匂い」、「香り」という点においてはとても親近感がありまたとても興味深い分野である為とても楽しみにしていた作品だったが期待したのとは違った作品であった。
もちろん匂いのプロ達の専門用語は作中で幾度となく使われているが、調香師ならではのドラマやストーリー性には欠ける。
あくまで主人公の二人が人生つまづいており、その一人の仕事が調香師ってだけであって別に他の仕事でもこの作品は成り立つ様に感じてしまった。
ただ詳細は違えど壁にぶつかる二人が、今までは自分勝手に真っ直ぐ生きてきたギヨーム、人との関わりをなるべく避け相手の存在をできる限り無視して生きてきたアンヌが出会う事で、共に今までの自分を見つめ直し、正しい人間関係を構築する事で最後はハッピーエンドで終わるところはとても温かい気持ちにさせてくれる作品であった。
変に恋愛描写もなく、ゆっくりゆっくりと心移りゆく描写は見やすくてこちらも優しい気持ちになれる作品ではないか。
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