「香りと脳の繋がり」パリの調香師 しあわせの香りを探して パプリカさんの映画レビュー(感想・評価)
香りと脳の繋がり
執着してしまう香りがある。
春先の沈丁花の香りが待ち遠しいとか、トワイニングのバニラティーとグレープフルーツとジュニパーメインのバスオイルは常にストックしておきたいとか、レモングラスは生の香りが好き、などなど。
鼻の奥の方でたまらなく欲していて、芯からリラックス出来るのだ。
アンヌが懐かしくなった手洗い場の石鹸の香りも同じだった。
香りを擦り込む様に泡立て手を洗い、香りを吸い込む。見てる私の目にも幼い彼女が浮かび、あゝ香りが鼻の奥の方かすめてるそう思ったと同時に私の何かがパカっと開いてしまった。
深いリラックスと過去の記憶と過去の空気が、頭からぶわーって放たれる。
店員の香水、草刈りの草の香り、この作品にはプルースト効果を思わせるシーンがたびたび出てくるが、そのたびにスイッチの入った私の脳はアンヌやギヨームと記憶を共有し、見えない思いに涙を流してしまった。
まったく接点のないアンヌとギヨームの歩調が次第に合ってくる。
共通点は、惜しげもなく脳を解放し香りを受け止められる所と感じる。
久しぶりに、はじめてピンと来た香水を引っ張り出してワンプッシュ。1990年代前半の時代の空気がぶわーっと溢れ出して来た。
普段思い出さない記憶と空気を引き出す香り達、香りと脳の繋がりを体感する素敵な作品だった。
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