「どう生きたいのかと観客に問う映画」デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
どう生きたいのかと観客に問う映画
デニス・ホーは本当に格好いい人だと思う。生き様が格好いい。香港の自由のために、一個人としてデモの最前線に立ち、武装警官と衝突を避けるために言葉を尽くす。催涙弾の飛び交う中、一般市民と行動を共にする。国連や米国議会でもスピーチし、歌の力で若者に勇気を与える。中国本土での活動を禁じられ、収入の9割を失っても彼女は活動を止めない。彼女の行動動機は損得を超えた内発性にあるのだ。
有名人が政治的な発言や行動することの重要さを説くような映画ではない。そんなことをこの映画は強制しない。むしろ、自分で考え、自分で自由に選ぶことの重要さを描いた作品だと言える。彼女の行動は誰にも強制されていないし、誰かに望まれたからやっているのでもない(むろん彼女は多くの人に支持されているのだが)。デビュー曲「千の私」の歌詞が彼女の生き方を象徴している。「たとえ私が死んでも、後に続く者がいるだろう」あなたはどう生きたいのか、とこの映画は見る人に訴えている。
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