劇場公開日 2021年8月7日

  • 予告編を見る

「ブラジルサントスの香りさえ感じられなかった」オキナワ サントス 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0ブラジルサントスの香りさえ感じられなかった

2021年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 コーヒー専門店ではメニューに「ブラジル」ではなく「ブラジルサントス」と書かれている。サントスはブラジルがコーヒーを出荷する港である。サンパウロから車で2時間程度。ブラジルにとって重要な港湾都市だ。

 本作品は第二次大戦中から戦後にかけてサントスにいた日本人が差別されてサントスからの退去を命じられたという話である。ファシストのヴァルガス大統領が連合国側に参戦して枢軸国側の日本が敵になった。だから日本人が排斥された訳だが、その事実を示す書類などは残っていないらしい。ただ2枚の写真があるだけだ。どうやら電車でサンパウロに行ったみたいである。
 そこで当時のことを記憶しているかもしれない人にインタビューをするのだが、なにせ当時子供だったから、漠然とした印象や具体的すぎる記憶があるだけで、一向に全体像が見えてこない。全体像が見えないまま、映画は終わってしまう。せめて歴史的な背景でも解説してくれればよかったのだが、インタビューを並べるだけのドキュメンタリーになってしまった。排斥された日本人の悲哀も伝わらない。作品に対して何の感情も湧かなかったことに加えて、映画からブラジルサントスの香りさえ感じられなかったのも、あわせて残念である。

耶馬英彦