「(恐らく)日本特有である“ヘタウマ”文化」サマーフィルムにのって シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
(恐らく)日本特有である“ヘタウマ”文化
今回は、作品よりもタイトルにした“ヘタウマ”という言葉についての思いを重点に書いて行きます。
この言葉に馴染みがない人にも、いつもの様にウィキで簡単に説明しておくと、
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・創作活動(なかんずくサブカルチャー)において技巧の稚拙さ(つまり「ヘタ」)が、かえって個性や味(つまり「ウマい」)となっている様を指す言葉。
・技術が下手で美術的センス、感覚がうまい、つまり技巧的には下手であるが人を惹きつけて止まない魅力があるものを指す。
・ただし、稚拙さを技術不足ととるか、計算や個性、あるいは味と捉えるかは、受け手の主観によるところが大きいため明確な定義は存在しない。
・そのためか「ヘタヘタ」という表現も存在する。
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とあります。
この言葉が日本特有の言葉なのか、世界にも類似語かあるのかは分かりませんし、芸術の分野で考えると例えば絵画での印象派の登場した時や、ピカソのキュビズムにしても、同じ様に扱われた時期もありますが、今回は日本での高度成長期位の漫画から生まれたこの言葉に限定して考えて行きたいと思いますが、個人的には作り手の確信犯的“狙い”が見えたら“ヘタウマ”作品と呼んでいます。特に日本の文化面では漫画に限らず大きな特徴の一つだとも思っています。
さて本作についてですが、予告編だけ観ていたら今の私なら鑑賞しなかったと思いますが、凄く評判が良かったのでつい惹かれて観に行ってしまいました。
本作を鑑賞して、評判の高さに対して「ああ、なるほどな」と思えましたが、私はまず数年前にブームになった『カメラを止めるな』(以降『カメ止め』と表記)との共通性を感じていました。
映画評でのお決まりの否定文で「まるで、自主映画の様な」とか「映研の学生が作った様な」という文章をよく見かけ、一見した感じ低予算の稚拙でチープで独りよがりな作品に対してよく使われる言葉ですが、2作品共まずそういう批判を受けそうな作りであり、それを逆手に取って映画製作の色々な制約や弊害を観客に認識させることによりハードルを下げ、映画本来の制作動機やメッセージだけを強く訴えることに徹した作品作りを行っていたようなので、本作も久々のヘタウマ作品だと思えました。
私は『カメ止め』の感想で日本版『アメリカの夜』と評しましたが、本作のテーマも同様で、あえて映画好きの心をくすぐる様な映画制作の物語にして“映画愛”を訴える作品作りは全く一緒でしたね。
但し、これが本当に下手な作品なら評判にはならない訳ですが、ここに“ヘタウマ”というテクニックを使い、作り手の根底にあるメッセージを観客にストレートに伝えカタルシスを味合わせるという作品であり、こういう作品こそガラパゴス化と言われる、今の最も日本映画らしい特徴の一つの様な気がします。