「荒ぶる夢追い人」サマーフィルムにのって ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
荒ぶる夢追い人
確か昨年にこの作品の情報が公開され、伊藤万理華さんが主演ということで(乃木坂時代からのファンです)、心待ちにしていたらもう夏!ということで久しぶりにミニシアターに足を運んで鑑賞。
97分ずっとまっすぐに映画のことばっか考えているハダシが青春を駆け抜ける物語です。
まず役者陣の演技が素晴らしい。特に伊藤万理華さんの少年と少女が混在したような表情から繰り広げられる見ていて楽しい動き。大人びた映画・時代劇への熱。元々演技は上手だなと思っていましたが、今作では今までよりも抜きん出て良かったです。
金子大地さんも、無垢な状態から剣士への変化、タイムスリップという突飛なアイデアの影響を感じさせない自然な演技力。「猿楽町で会いましょう」とはまた違った超好青年な一面を見れました。
撮影に携わるメンバーも七人と、どこかの侍を彷彿とさせる小ネタを仕込んでいるのでこれまた憎いです笑
映画部の費用はキラキラ映画を撮るために予算がつぎ込まれ、ハダシの作る映画はバイトして貯めたお金で作るという流れは、現在の邦画の世界に色濃くマッチしてるなと思いました。俳優人気だけで原作の要素などを無視してはいるがヒットしてしまう作品が前者で、アイデア勝負で、予算をかき集めて一本作るけど、公開規模が大きくはないのが後者です。ミニシアターで見る作品は名作が多いですが、映画を年に数本しか見ない人にとって知られる機会が中々得れない現状です。でもそんなことに負けずに、キラキラ映画の上映をぶっ潰してやろうと考えるハダシの考えには思わずにやけてしまいました。
作中ではドッタンバッタンしながらも映画への完成へと近づきますが、キラキラ映画チームの1人が主演の男の子に告白して振られて倒れるという突然の漫画的展開が待ち受けていますが、ここで忌み嫌っていたキラキラ映画チームへの助っ人を買って出て、その恩返しに撮影の全てをキラキラ映画チームが買って出るという協力する展開がありました。大変に胸熱な展開でした。ザ・青春という感じで記憶にはない青春が蘇ってきました。
タイムスリップという突飛な描写が出てきて、それでかつ、2100年にはハダシは名監督として名前を挙げられており、そこから映画そのものがなくなっているという衝撃的な事実も明かされます。未来では1分で長編という今のYouTubeが行くところまで行ったような感じです。凛太郎はハダシの作品を見たいがためにタイムスリップするというドラえもんの世界観のお話かな?と思ってしまいましたが、そんな飛びすぎたアイデアでありつつも、そこまで違和感を感じないのはタイムスリップを軽めに描いているからだなと思いました。
無事学祭での公開が決まりましたが、そこでハダシが凛太郎に恋をしているという描写が最後に活きてきます。映画は互いを斬り合わない時代劇という変則的なものでしたが、映画監督として、1人の人間としての覚悟を決め、映画上映を止め、その場での実践という形に変えました。現実への昇華にも見える描写がとても若々しくもありつつ、真っ直ぐな気持ちが伺えて非常に爽快なシーンでした。殺陣のレベルも高く、一度は憧れる箒でのチャンバラも見応えがありました。互いに好きと伝えながらも決着をつけるという余韻を残しつつ終わります。
限られた時間の中で、素晴らしい作品を作り上げたのは映画の中もこの映画も同じで、とてもシンクロしているなと思いました。この真っ直ぐさに嘘はなく、もう後半はずっとグッときていました。この夏を代表する最高の青春サクセスストーリーです。ぜひ劇場で!
鑑賞日 8/9
鑑賞時間 11:50〜13:35
座席 Free
映画監督として、1人の人間としての覚悟を決め、映画上映を止め、その場での実践という形に変えました。現実への昇華にも見える描写がとても若々しくもありつつ、真っ直ぐな気持ちが伺えて非常に爽快なシーンでした。
彼女の覚悟が伝わってきます。良いラストでした。