劇場公開日 2020年12月25日

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「凡庸とは言いたくないけれど…」FUNAN フナン pekeさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0凡庸とは言いたくないけれど…

2021年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

僕はカンボジアを2度訪れました。
また、ポルポト時代の同国の様子を少し勉強していたということもあり、興味を持って映画館に足を運びました。

でも期待したほどではなかった。
アヌシーで受賞したということですが、とくに感動はしなかった。
凡庸と言いたくはないが、特筆すべきことのない作品でした。

ポルポト時代の4年間で犠牲になった人は、100万とも200万ともいわれています。
カンボジア全土で虐殺が行われ、遺体の多くは土に埋められました。
多数の遺体が埋められた土地(キリング・フィールド)では、土壌の表面まで脂が滲み出していたといいます。

もちろん、本作でも悲惨な出来事は数々描かれているのですが、「親子愛」がテーマのアニメーション作品ということもあってか、そういった陰惨さ、生々しさは抑えて表現されていました。
それゆえに、極限状態に置かれた人間たちを描いているわりには、どこか緊迫感に欠けるような気がした。

ストーリーも想定内のものでした。
強制労働下における人々の生活について何か新たな知識を得ることができるかなと思っていたのですが、それもほとんどなかった。
そして、いちばん大事な、映画のクライマックスであるはずの、親子が再会する場面もわりとあっさりとしている。
もっとも、このシーンは、長きにわたる過酷な生活によって、親子双方の、とくに子どもの人間的な感情が鈍麻したということを表しているのはわかるのですが、それにしてもちょっと拍子抜けでした。

あと、これは僕がじっさいにカンボジアを訪れているから思うのですが、舞台となった現地の雰囲気があまり伝わってこなかった。
その要因のひとつは、セリフが全編フランス語ということ。どうしても「違うんだなぁ」と思ってしまいます。
それから、映像からも東南アジアの温度や湿度をあまり感じなかった。

ちなみに、カンボジアの土はもっともっと紅い。
ポルポト時代に虐殺され埋められた人々の血が滲み出しているのかと思うほど紅い。
僕がカンボジアを旅して印象的だったのは、その大地の紅さと、人々が身につけている「クロマー」の鮮やかさです。
まあそこまでローカルカラーを打ち出す必要も、リアリティーを追求する必要もないのだろうけれど。

あと、タイトルの意味するところも、ちょっとわかりにくいかも。

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peke