「アニメであることの意義は?」FUNAN フナン Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメであることの意義は?
エンタメや“感動モノ”を狙うことなく、真面目な意図で描かれた映画の意義について、疑問をはさむつもりはない。
ただ、アニメとしての表現力には、疑問符を付けざるを得ない。
アニメでは、実写における細かい演技や、リアリティを犠牲にすることになる。
その代わり、アニメの利点として、実写では不可能なタイプの生き生きとしたキャラクターが作れるだけでなく、実写ならではの様々な制約を脱することができるはず。
状況をビジュアルで分かりやすく伝えたり、抽象化あるいは理想化して本質的な表現を追求したり、背景を美しくあるいは残酷に描けることなどが挙げられると思う。
しかしこの作品では、アニメーションの力不足で、キャラクターにある種の“生気”がないだけでなく、怖さも切迫感も飢餓すらも伝わってこなかった。
事実に立脚した淡々とした内容であるにせよ、演出はもう少し工夫しても良かったのではないか。
アニメにしかできないことが、何かあっただろうか?
アニメであることの意義が、今ひとつ感じられなかった。
単に実写映像を画に起こしただけのようにも見え、実写とアニメの“悪いとこ取り”のような、奇妙な感じがする。
まだ公開されていないが、東京国際映画祭2020で観たアニメ映画「トゥルーノース」(北朝鮮の強制収容所を扱った作品)の方が、はるかに優れている。
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