劇場公開日 2022年8月26日

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「殴りたい顔の役者オンパレード」激怒 屠殺100%さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0殴りたい顔の役者オンパレード

2022年10月30日
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どうも癪に障るという顔がたくさん!人間には殴りたくて殴りたくてやむにやまれぬ顔がある。原始的な暴力の欲動とは、きっと、ただもう、ひたすら、むしゃくしゃさせる殴りたい顔を殴りたい!というものであると思うし、できることなら粉微塵にしたい!というものだと思うが、その欲動が湧き上がってくる一級品の顔をよくこれだけ揃えられたものだ!と、感嘆せざるをえない。

顔は、人となりが作り出している部分が多分にある。マザコン内弁慶の引きこもり野郎、権力欲に突き動かれたおべっか使いのヒラメ野郎、へらへらノーテンキに組織の歯車をやる馬鹿野郎、男女で楽しそうにしている若者に極度に嫉妬する助平ジジイ、金に物言わせて日頃の宮仕えの鬱憤を女にぶつけるクソサラリーマン、ねずみみたいな顔して権力に媚びるしかない弱虫等々。

どいつもこいつも怒りの鉄拳で目を覚まさせてやる必要があるが、今は、やれコンプラだ、安全安心だ、と日本独特の神経過敏で過剰かつ異様ともいえる雰囲気が国全体を覆っており、暴力は厳禁体制。日本のすべての製造業は安全第一がモットーで、社内にポスターや標語を貼りまくり、社内で起きた事故の周知を徹底し、立哨やミーティングで注意呼びかけし、安全パトロールやリスクアセスメントで不安全行動や事象を徹底的にゼロにすることに膨大な金と時間を使って、社員に安全を守らせようと日夜行動している。これは、まさにこの映画の世界と同じであり、安全という名の恐怖政治は日常に存在するのだ。

コンプラや安全安心を理由に、人間の原始的な欲動の一部である暴言暴力が人工的に極端なまでに抑制された社会で、フラストレーションをためた器の小さなやつは自分より立場の弱いやつを自らの暴力欲の餌食にする。そういうクソ野郎を暴力で制裁するのが主人公の川瀬陽太。殴りたいやつを殴りスカッとするという暴力の正の部分を存分に発揮してくれる。どうしようもない顔したクズでも、法で暴力からは守られているはずだが、法を盾にクズ行為をするようなやつは即殴りだ。

この主人公は、警察であるにも関わらず、暴力を法に則らず使う。法の傘に守られて、あるいは安全という一見正しいスローガンの傘に隠れて暴力を使う不届き者を制裁するために暴力を使う。それは、聖性をおびた暴力、あるいは善悪の彼岸にある暴力であるともいえる。そして暴力は常に極端な笑いを誘う。この笑いも常に善悪の彼岸にあるといえる。そして、この主人公のもう一つ大きな点は、ダメな人間が好きだということ。自分自身を含め人間は不完全であることを受け入れているから、威張ってさえなければダメで弱いやつに甘い。この主人公が人間不振になって闇落ちすれば、ジョーカーのようなキャラ展開になると勝手に想像して楽しんだりすることもでき、いろいろ夢想の喜びを与えてくれる。

法や安全スローガンも所詮人間が作った不安定なシステムにすぎず、クズ野郎がそれを使えば腐臭やクソ臭を放ちだす肥溜め以外の何物でもない。ただ、そいつが殴りたい顔をしているかどうかが一番のライトシングの判断基準になるというのがひしひしと伝わるすばらしい映画でした!

屠殺100%