「独特の映像美に彩られたヴァイオレンスが浮き彫りにする凶暴な社会風刺、強烈な強烈な毒気に激しく咽せました」激怒 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
独特の映像美に彩られたヴァイオレンスが浮き彫りにする凶暴な社会風刺、強烈な強烈な毒気に激しく咽せました
まずBGMで鳴っているシンセの音が80〜90年代のVシネ感を醸していてゾクッとさせられます。実際主人公の深間は昭和を引き摺った刑事で、血の気の多い若いチンピラの面倒を見つつ夜の世界に睨みを効かせる男。暴力事件で一般人を殺してしまい3年もの間 NYの謎の医療機関に拘束されて帰ってきてみると街は安全・安心のスローガンを掲げた警察と町内会が町内を暴力で支配していましたという話。アートディレクターとしても映画ライターとしても極めて個性的な作品を世に出している高橋ヨシキ氏が企画、脚本、監督を務めた作品ということでまず全編を覆っているのは凶暴な社会風刺。一台も車が通っていないのに赤信号を待つ通行人達、ゴミ屋敷に住む親子を排斥しようとする不法侵入する住民達、グリーンのベストを着て集団でパトロールし些細な罪を犯した者をリンチする自警団、富士見町という架空の町は現代日本のカリカチュアであり、そこでついにブチ切れる深間の姿は『フォーリング・ダウン』の主人公や『デモリションマン』の悪役フェニックスを重ねてしまいます。
独特の映像美に彩られたチープで猥雑な世界観は『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』のパノス・コスマトス、『サマー・オブ・84』のフランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセルといった監督陣の作風とも共鳴するぎらついたヴァイオレンスに満ちていて、強烈な毒気に激しく咽せました。
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