「それは政治的意図だったのか、スチューデント・パワーへの憎悪だったのか。」シカゴ7裁判 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
それは政治的意図だったのか、スチューデント・パワーへの憎悪だったのか。
司法は法により違法を正す。個人的な価値観やイデオロギーを持ち込む判事も、「力を持つもの」におもねる判事も、あれですが。アメリカは、正に大統領選に関して、全開で誰かにおもねってるみたいです。シャレにならんよねぇ。
感動した。今のご時世、色んな事が頭に浮かんでしまうけど。
今日の政治と司法の問題は、一旦は、全て忘れて感想文。
◆時代背景 - 混沌の時代
1968年の民主党大会は、次期大統領の候補者指名のための大会。「大義無き戦争」として歴史に名を刻むベトナム戦争への反対派の旗手は、ロバート・ケネディでしたが暗殺されてしまいます。戦争反対派は、ベトナム戦争を始めたジョンソン政権の副大統領であったヒューバート・ハンフリー指名への抗議活動のために、シカゴに集まって来ます。
当時のアメリカ国内情勢は、混沌としていました。皆徴兵制に反対する学生を中心とした反戦運動の高まり。イッピーと呼ばれる、政治的思想を持つヒッピーの一部は、共産主義を基本とした思想を持ち共同体を理想とする若者たちで構成されていました。そして、黒人解放運動。
1968年頃と言うと、おそらくスチューデント・パワーの運動が、次第に暴力的にエスカレートし始めた頃。1968年5月の「5月危機」がきっかけとなり、騒乱はパリから全世界へ伝搬して行きます。
その前年、1967年にはデトロイトで黒人と警官隊が衝突。州兵のみならず、ジョンソン大統領令により連邦軍までが出動する事態となった暴動では、43人が死亡していました。
イッピーのアビー・ホフマンとジェリー・ルービンは有名人でした。映画の中でも、ユーモアとウィットと風刺的な態度が描かれていましたが、彼らの活動は非暴力ですが辛辣でした。2000人が手をつないで輪を作ってペンタゴンを取り囲み、「空中浮揚させるぞ!」なんて言う、ふざけた抗議活動を行った事は有名です。1968年の民主党全国大会時は、「本物のブタ」を自分たちの候補者として担ぎ出し、民主党をおちょくっています。
◆政治裁判
時の大統領は、共和党のニクソン。彼は、戦争を終結させるためにキッシンジャーを和平交渉に派遣する等の努力は、した人ですが、その交渉を有利にするために一時停止していた北爆を再開し、非難も浴びました。
「反戦」への理解はしつつも、 スチューデント・パワーやイッピーの抗議活動が広がって行く事も、ブラックパンサー党の様な「黒人自治」も許容は出来ない。と言う事なのでしょう。
「見せしめ」としての政治裁判は、民主党のジョンソンから大統領を引き継いだ、共和党のニクソンの元で始まりました。
◆明らかな演出(史実との不一致部分)
裁判で量刑が言い渡される前、トム・ヘイデンには発言が許されます。「手短に」と念をおした上で、ヘイデンは5000人余りの戦没者の名前を読み上げて行きます。
事実は、彼が判事の制止を無視してリストを読み上げたのは、公判中であった1969年10月の「ベトナム反戦デー」での事。彼の「主張」は強制的に終了させられています。
映画の中では、このラストが、本当に最高でポロリーンでしたけど。
物語を盛り上げるための、演出ですw
◆製作陣とキャストが最高過ぎ
脚本・監督は、「モリーズゲーム」に続いての法廷劇となったアーロン・ソーキン。製作の中で目立つのは、「ラ・ラ・ランド」等のマーク・プラット。音楽は「ハーレイクイン」等のダニエル・ペンバートン。撮影は「フォード vs フェラーリ」等のフェドン・パパマイケル。もうね、最高です。
役者さんも渋い実力派が集まってます!
その後、政治の世界に進み、ジェーン・フォンダとの結婚・離婚歴のあるトム・ヘイデンにエディ・レッドメイン。
アビー・ホフマンのサシャ・バロン・コーエンは、「レ・ミゼラブル」でテナルディエ役(コゼットを養っていた宿屋の主人)を演じてたんですね。レッドメインとは、そこで共演してるんだ。
ボビー・シール役のヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世は、「ザ・グレーテスト・ショー・マン」で、ゼンデイヤのお兄さん役の空中ブランコ乗り役だった人。
デリンジャー役で監督作もあるジョン・キャロル・リンチは、先日「宇宙人ポール」を見たばかりw
若き敏腕検察官リチャード・シュルツ役は、「インセプション」のジョセフ・ゴードン=レヴィット。
フレッド・ハンプトン役のケルヴィン・ハリソン・Jrは、「イット・カムズ・アット・ナイト」「ルース・エドガー」「WAVE」「J・Tリロイ」「ネクスト・ドリーム」と、もう乗りに乗ってます。
弁護士クンスラー役、マーク・ライランスは「ダンケルク」「レディ・プレイヤー1」にも出演していた演出家・劇作家。
良かった。とっても!
いやぁ、本当に見ごたえありました。
レビューに感動しました。
歴史的事件の整理、背景、
とても勉強になりました。
ラストの戦没者を読み上げるシーン。実は公判中の別の日・・・
だったんですか?
私もラストにポロリでした。
コメントありがとうございます。
素晴らしい作品はラストシーンも素晴らしいものですよね。
シカゴ・セブンの闘いは、戦役者の為の闘いなのです!
コーエンはかなりの最有力だそうで
他にも有力者はいるようですが、混戦の今回、コーエンの人気や『続・ボラット』の好評、本作での名演を考慮すると…最も近いかもしれません。
今晩は
又、叱られそうですが、”本気を出した”映画評論家顔負けの素晴らしき情報量の、レビュー。
読みごたえがありますし、恥ずかしながら知らないことも多数ありました。”ラストの戦没者名を読み上げる件”など・・。
ー 一旦は、全て忘れて感想文 -
感想文、本当に苦手だったのですか!(覚えていますよ・・)
では、又。
<映画館も、昨春の様な状況になるのでしょうか・・。>