「マジメなのにボンヤリな国民性を乏しい表情で哂う不条理喜劇」きまじめ楽隊のぼんやり戦争 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
マジメなのにボンヤリな国民性を乏しい表情で哂う不条理喜劇
すでに多く指摘されているように、アキ・カウリスマキやロイ・アンダーソンなど抑制された演出と特有の間(ま)で独自の世界観を構築して社会批評をオブラートに包む北欧勢のスタイルを思い起こさせるが、池田暁監督が「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」で極めた世界はある種“コロンブスの卵”的発見と言えるのではないか。架空の時代の架空の場所という設定だが、おそらくは太平洋戦争時の日本をカリカチュアライズした状況であり、それに先述のような演出スタイルがこれほど見事にはまるとは!
外国人から見た日本人の印象は、まじめで礼儀正しいが、一方で表情に乏しいというもので、そうした海外からのイメージも巧みに利用し戯画化したように思う。戦時下の全体主義社会では大本営発表を鵜呑みにし、お上に従って個人の考えを持たない国民が模範とされたが、現代もうわべだけの民主主義の下、忖度と同調圧力が強まっていくばかりであり、本作で描かれるコミュニティーはあたかも、歪んだ鏡に映ってデフォルメされた私たちのようではないか。
キャスティングも絶妙で、とりわけ片桐はいり、嶋田久作、お笑い芸人の今野浩喜と矢部太郎ら個性的な顔立ちの面々が妖怪風のムードを醸し出し、映画の異界感に貢献している。
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はなもさんのコメント
2021年4月29日
はじめましてー。
今日見て来ました。私は、とっても面白かったです。
おっしゃる通り、演出、出演者、チグハグな時代と画像の可笑しさが、シュールでツボにはまりました。感想を分かち合い感じです。ゆっくり感想アップするのでそのうち訪れてみてください。