「さすがのロシア映画!性愛の奥底を普通のフリして突いてくる、クレバーで挑発的な作品」不倫する裸体 コタツみかんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0さすがのロシア映画!性愛の奥底を普通のフリして突いてくる、クレバーで挑発的な作品

2025年3月7日
PCから投稿

興奮

知的

なぜか心がザワついた時、この映画を何度も観てしまう。おおよそ不倫とは無縁そうな主人公レーナがその快楽に目覚めていくプロセスがあまりにもリアルで、たった一つの本当の自分など存在しない、誰しもが人には見せない複数の人格を生きているのだということを、この映画は不貞を罰するフリして挑発的に見せつけてくるのだ。

知的で仕事ができ、やや堅物そうな美人というレーナのキャラがまた絶妙。夫の不倫を疑っても、わかりやすく嫉妬したり、問い詰めたり、ましてや泣きわめいたりもしない。ただ、夫に隠れて、ひとりナイトクラブに気張らしに行き、そこで自分も見ず知らずの男とベッドインするのだ。

最初は罪悪感もあってか、あまり楽しめた風ではなかったレーナ。しかし、浮気の味は塩水のごとく、飲めば飲むほど喉が渇いてくるもので、次の男とはカーセックスから、なんと大胆にも砂浜での激しい青姦に興じてしまう。そして、もはや止められなくなったレーナが、買い物中に中年男性らがたむろするカフェバーを眺め、自ら声をかけられに行くシーンがやけに生々しい。

怒り心頭の夫との修羅場の中で、どんなプレイをしたのかと子細に尋ねる夫が、半分ヤケになって「ビッチな妻に興奮している」と吐露するが、確かに観ている側も知的で堅物に見えていたこの女性がなんだかとっても性的魅力にあふれた女性に見えてくるから不思議だ。

そして、夫とやり直すことになったラスト、2人は元に戻ったかのように見えながら、この映画は意地悪くもそうはならない別の可能性を暗示して終わる。あたかもビッチな妻の方が魅力的じゃないですか?と言わんばかりに…。

なんともクレバーで、挑発的な映画である。

コタツみかん