劇場公開日 2020年12月18日

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「静かで優しい鎮魂歌と再生の哀しみ」この世界に残されて Hirohito Yasodaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0静かで優しい鎮魂歌と再生の哀しみ

2021年1月5日
iPhoneアプリから投稿

ホロコーストでそれぞれの家族を失った中年医師と少女の奇妙な共同生活が、やがて互いを思いやり、やがてそれぞれの道を歩み始めるまでの数年間を、大げさな演出なしに細やかな感情の動きを静かに綴った大人向きの映画。二人がお互いを思いながら道を外れない生活に死者への敬意も感じられる。ヒトラー支配の後に共産主義に移っていく国家体制の影も、大事な話は盗聴されないように話すことなど生活のディテールで間接的に示される。過去の悲しみを越えた先にもまた哀しみがあることも語っているところが共感できる。

Boncompagno da Tacaoca