劇場公開日 2020年12月11日

「冷酷な消費者」NETFLIX 世界征服の野望 おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5冷酷な消費者

2020年12月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

原作本があると知って、書店を探したが見当たらない。はたと思いつきkindleで検索、やはり配信されていた。需要が生じてから供給されるまでの時間を極限までに短縮する。こらえが効かない消費者を相手に、事業者は苛烈な競争を戦っている。

報道で知り、窮状にあるブロックバスターの店舗を訪問する客はお金を落とさない。過去を懐かしみイベントとして消化する消費者たち。私たちは冷酷な消費者だ。

日本でも個人経営のレンタルビデオ屋は見なくなった。個人書店も経営危機にあるという。株式取引だって、AIや通信回線といったインフラに多額を投資できる巨大資本には勝てないだろう。勝者が業界の利益を寡占する。経世済民とはほど遠い経済活動だ。NETFLIXが個人の起業から成長したことや多くの雇用を生み出したことを考慮しても、その有り様には違和感がある。

映画は興行であり、利益を上げ続けることで継続できる。映画業界に参入する者が利益を追求するのは当たり前のことだ。他方で、映画は多くの利害関係者が参加する複雑な経済活動であり、それらが生きていけるための配慮を欠けば、いつかは崩壊するだろう。そのとき、わたしたちは偉大な文化資産を失うことになる。

アルフォンソ・キュアロン監督が述べるように、映画配給の新たな手段の登場を踏まえて、これからどのような制作をすべきかについて議論すべき段階にあるとかんじた。

おかずはるさめ