劇場公開日 2021年1月8日

  • 予告編を見る

「穏やかな喜劇かと思いきや、家族間の確執や企みが露わに」ハッピー・バースデー 家族のいる時間 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0穏やかな喜劇かと思いきや、家族間の確執や企みが露わに

2021年1月18日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

知的

影響力の強い高齢の母親のもとに、子らがそれぞれの家族やパートナーを連れて集まるという設定では、昨年4月公開のイザベル・ユペール主演作「ポルトガル、夏の終わり」が記憶に新しい。あるいは精神に問題を抱えた人物が久しぶりに家族のもとに帰ってきて波紋を広げるという展開は、アン・ハサウェイ主演作「レイチェルの結婚」や、ジュリア・ロバーツが母親役の「ベン・イズ・バック」を想起させる。「ハッピー・バースデー 家族のいる時間」という題やいかにも家族団らん風のキービジュアルから、楽しげな家族劇と早合点してはいけない。先に挙げた3作品のように、家族間の積年の確執、隠し事や企みが次第に明らかになり、観客もはらはらと気をもみ、似たような経験があればキリキリと胃が痛むといった案配だ。

監督・脚本のセドリック・カーンが長男を演じていることに加え、長女役の女優、次男役の俳優(いい歳して映画監督志望という設定)もそれぞれ監督業もこなすというから、かなり作為的なキャスティング。孫娘が少年たちを従えて披露する劇中劇の扱いも含め、「演じるという行為」と「家族と関わること」の類似性を示唆する意図を感じた。

高森 郁哉